夢と現実の狭間の段 ページ12
「どうして、逝ってしまったの?」
お母さんが泣いている。妹がその肩に手を乗せる。お父さんは呆然としたように、側で立っていた。
「どうして、私たちを残していくの!?」
『違うの…………お母さん…………』
泣き叫ぶ母親。私は必死に声をかけるけれど、何一つ届かない。お母さんの泣き声が頭の中でこだまする。私を、飲み込もうとする。
『ねえ…………お願い……泣かないで……』
「─────A!」
『っ!?』
ハルに揺り動かされて、夢から覚めた。全身に嫌な汗をかいていて、呼吸が乱れている。医務室の布団の上で、ハルが私を覗き込んでいた。
「魘されていたわ。もう見ていられなくて」
『ハル…………』
体の怠さと傷の痛みも相まって、決壊したダムのように涙が溢れてきた。
『私…………酷いこと、しちゃったよ…………』
一ヶ月も待ってくれた家族や友人を裏切ってしまった。さよならの一つも言えなかった。最低だ、私。
記憶を取り戻したのに、もう二度と会えないなんて信じたくない。もっとたくさん話しておけばよかった。一緒に出かけていればよかった。普段言えないことだって伝えておけばよかった。せめて最後に、あの温かい手に触れたかった。
お母さんに、会いたいよ。
『ごめんなさい…………ごめんなさい……!』
ハルが頭を撫でてくれる。涙が幾筋も、目の際から耳の方へと落ちていった。震える手で口元を押さえ、私は声を殺して泣き続けた。
今はただ、二度と会えない家族のことしか考えられなかった。
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メロンパン(プロフ) - みんながわい”い”ーー!!!😭 (2022年11月3日 20時) (レス) @page16 id: c77e52a74c (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - あいさん» ありがとうございます……! (2022年4月27日 0時) (レス) id: af895ee0d7 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 初コメです!! これ面白いです! 続き頑張ってください (2022年4月13日 8時) (レス) @page44 id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - 愛衣さん» 愛衣さん、いつもコメントありがとうございます!読んで貰えてこその小説ですので、愛衣さんのような方がいてくださって本当に嬉しいです(*^^*)コロナに負けずに頑張りましょうね!これからもよろしくお願いしますm(_ _)m (2021年6月18日 23時) (レス) id: 53993a59b7 (このIDを非表示/違反報告)
愛衣(プロフ) - 長くなって申し訳ございません!!これからもずっと応援しています!大好きです!!!!更新頑張ってください!! (2021年6月18日 22時) (レス) id: 67408eab69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむー | 作成日時:2021年6月5日 19時