優秀なくのたま劣等生！其の一

▽ ページ24

「図書委員会の仕事を説明するね。基本的には本の貸し出しや整理整頓。図書室でマナーを破っている人がいないか見回ったり、本を探している人を案内したりしているよ」

　不破先輩は優しいオーラが溢れ出している。同じ顔でも鉢屋先輩とは大違いだ。変装されて嫌では無いのだろうか。

『大変なんですね』

　みんながみんなルールを守れるとは限らない。本をずっと借りたままの人もいるだろうし、私みたいなコミュ障もいる。

「でも、すごくアットホームな委員会ですよ」

顔色のわるい一年生の怪士丸が微笑む。この子からはあの斜道先生と同じ雰囲気を感じる。確かに、会計委員会に比べたらほのぼのとしている気はするが。

「本を返さない人がいたら、いくら学園長だとしても許しません！ しっかりと返すように催促しに行きます！」

　久作が力強く言うのを聞いて、中在家先輩が笑い出した。

「ふへ、ふへ、ふへへへへ…………」

「中在家先輩！ 想像しただけで怒らないでください！」

　すぅっと鳥肌が立つような笑い。あれ怒ってるんだ。笑った中在家先輩が催促しに来たら、本を返すか、死ぬかだよね。きり丸が止めてくれると何も無かったかのように先輩は黙りこくった。

「もそ……………………」

『えっと、何ですか？』

　忍者の聴力を持ってしても、もそとしか聞こえない。きり丸がニヤッと笑って通訳する。


「本が好きなAさんなら大歓迎だ、だそうです」

『わぁ、ありがとうございます』

有難いお言葉。ずっとここにいたいなぁ。なんだか落ち着く。もう、他の委員会を見に行く必要もないんじゃないかな。

「さぁ、次のところに行くかー」

『えっ！ 待ってください、まだここにいたいです』

　学級委員長委員会が許しませんでした。尾浜先輩に必死に訴えるが無駄だ。

『行ってらっしゃい』

不破先輩が空気を読んでくれなかった。そう言われると引き下がるしかない。

『失礼しました……』

泣く泣く図書室を出る。他に行きたいところもないのに。私が何も言わずに図書室を振り返っていると、学級委員長委員会は勝手に場所を決めたらしい。そのまま連行される。


　


雷蔵「意外とちゃんと話すんですね、Aちゃん」
きり丸「顔を隠すと安心するって言ってましたし。ちょっと慣れてきたんじゃないんですか？」
長次「…………彼女が入って、くれればいいのだが」

委員会見学その三の段→←委員会見学そのニの段

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す