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傍らで聞いていた透子は「完全勝利!」と拳を突き上げる。

「なんか上手く丸め込まれた気がする……」
「気がするも何も、そうだろ」

ゲイツの冷ややかなツッコミに項垂れるソウゴ。しかし今更頷いてしまった事は覆せない。彼は釈然としないまま席に着き、盛大にため息をついた。そこで一言も話さなかったウォズが遂に口を開く。

「しかし、君は自身の身については考えていないんだね」

彼が言いたいのは、自身が男と同室になって襲われるという考えは無いのかということだろう。透子は顎に手を宛て何やら考え込む素振りを見せた後。あっけらかんと「別にいいけど?」等と宣った。その発言にはやはり一同凍りつく。しかしそんな彼らを見て透子は吹き出し、笑いながら言った。

「まぁ、こんなこと言っただけで凍りついちゃうような場所で、そんなことが出来る度胸があるならって話だけどね!」

彼女の言う通りだ。恐らく誰もそんな度胸は持ち合わせていないだろう。

「ね、そんなことできないっしょ?」
「当たり前だ!この家の中であんな……!あんな声を俺の耳に入れてみろ。許さないからな」

ゲイツの言葉にはてなを浮かべる透子。一体なんのことやら分かっていないようだ。ゲイツは苛ついた様子で机を叩き立ち上がると、彼女を指差し言い放つ。

「お前があのアパートで夜な夜な出してた声のことだ……!」

そこまで言って漸く合点がいったのか、透子は「あ〜!」と声を上げると、ケラケラ笑いながら机に頬杖をついた。彼女ののらりくらりとした態度に、更に苛立ちが増したゲイツは「何を笑ってる!」と声を荒らげる。

「あれ、あたしの声だと思ってたんだ?あはは、違うよ。あたしの元カノの声だから」

笑いながら言う彼女に、皆一瞬思考回路が止まったのか、一様に首を傾げる。

「彼女、声がデカイのがちょっと難点だったんだよなぁ。あたし個人的には我慢して我慢して、でも自然と声が出ちゃうって感じのほうが燃えるっていうか……」
「お前の好みなんて聞いてない!……どちらにせよ、此処に女を連れ込んだりするなよ」
「しないよ〜。その為に此処に下宿することにしたんだから」

「どうだか……」とそっぽを向くゲイツに、ソウゴ達は苦笑を洩らす。彼の気持ちも分からないでもない。もしも透子がたらし込んだ女の子達を連れ込無等すれば、この家は風紀が乱れるどころの騒ぎではないだろう。
 物議を醸す話題ではあったが、取り敢えずこの話は終わりだ。

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作者名:サインバルタ | 作成日時:2019年6月15日 15時

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