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これはまずい。惣一と季実子の脳内が見事にシンクロする。
「ってか隣の人アレ誰？」
「えっ、彼氏？ヤバくない？」
顔を青くして立ち竦む季実子の脳裏に、この一瞬の内で様々な悪い想像が駆け巡り、彼女は冷や汗を垂らす。惣一はそんな彼女に歩み寄ると「仕方ないな……」と呟き、その左手を掴んだ。
「走って！」
「えっ？うわっ！！」
スマートフォンを掲げ写真を撮ろうとしていたのであろう三人を避けるように、惣一は季実子の手を引いて三人が歩いてきた方向と逆の道へと走る。コンパスの差によって彼のスピードについていけない季実子は、息絶え絶えになりながらも手を離すまいと、彼の右手をしっかりと握った。三人組は追ってきていないようだ。
後ろを確認しつつ走っていた季実子は、惣一がスピードを緩めたことに気づかず。そのまま走っていた惣一の背中に思い切りぶつかってしまった。まさか激突されると思っていなかった惣一はというと、予想外の衝撃によろけながらも、しっかりと飛び込んできた季実子と自分の体を倒れぬよう支える。
「はぁ、久々に走った……」
「はぁ、はぁ、すみません、そ、いちさ……」
「いや……。それより速すぎなかった？大丈夫？」
「ギリ、大丈夫、です」
横腹の痛みを抑える為、左手を腹にあてようとしたところで気づく。
「あの、惣一さん、手……」
「あぁごめん！つい」
季実子は手を離そうとした惣一の手を慌てて両手で捕まえ、彼の顔を見上げた。
「いえ……。このままで、帰りたいです」
街灯に照らされた彼女の顔は耳まで真っ赤になっていた。惣一はそんないじらしい彼女を抱き締めたくなる衝動に駆られたが、流石にそこまで出来るほど度胸はなく。もしかしたらまた他の人に目撃されるかもしれないという恐れがあった為に、その気持ちの分だけ季実子の左手をぎゅっと握りしめ、彼女の歩幅に合わせて歩き始める。そして、それと同時に──"さっきの痴女行為は、この為なのか"と、先程の彼女の行動の意味に気づき、季実子から顔を逸らして密かに頬を緩めるのだった。
あとがき
銀杏BOYSの骨のMVが大好きで、あの映像にこの二人を当てはめてみました。
曲の歌詞とはあまりマッチしていません。
でもエモくてすごくいい曲なのでオススメです……！
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作者名：サインバルタ | 作成日時：2019年6月15日 15時
