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夜の静寂(しじま)に目を閉じて、空気の流れを感じる。この辺は夜になると皆寝静まり暗くなるせいか、星もよく見えて空気も良い。五十年後、荒廃した世界では感じられないこの空気を、ウォズは目一杯吸い込んだ。あの荒廃した世界こそウォズの目指す世界ではあるが、この空気も彼は嫌いではなかった。
その時。遠くから何やら女の声が聞こえ、ウォズは閉じていた目を開いた。すると、一台の原付を押しながら鼻歌を歌う声の主が近づいてきて、クジゴジ堂の前で止まる。
「あれか……」
新しい下宿人というのは。すぐに合点がいき、ウォズは薄笑みを浮かべる。彼に気づいた女──透子は「あー、もしかしてあんたがもう一人の住人さん？」と、ヘラヘラ笑いながら彼に近づいていく。
「如何にも」
「猿猴橋透子。よろしく」
「私はウォズ。魔王の忠実なる僕……。以後お見知りおきを」
「おー、厨ニ病？」
なんの遠慮も無いその言い草に、ウォズの眉がぴくりと痙攣する。
「まぁなんでもいいけどさ、風呂場ってどこ？案内してくんない？」
今の今まで情緒に浸っていたウォズは、その時間が壊されたことに若干の苛立ちを覚えたが。同時に彼女の有無を言わせない雰囲気を感じ取っていた為に、彼は透子を大人しく案内してやることにした。
「此処だ」
共に家の中へと入り、透子を浴室の前まで連れて行くと、脱衣所の戸を開けて中へと促す。
「へぇ、ここかぁ。ありがと」
「それでは、私は一足先に就寝するので……」
「おやすみ」と、言おうとしたウォズだったが。その言葉は出ず、代わりに「へぁっ！？」と間抜けな声が洩れ出た。透子が脱衣所の戸を閉めぬまま、すぐに服を脱ぎ始めたからだ。派手な臙脂色の柄シャツは既に脱ぎ去られ、ブラトップも殆ど上半身が裸に近い状態になるまで脱いでいる。夕食時の飄々とした態度はどこへやら。ウォズの驚いた顔に「どったの？」と問いかけるが、彼女の顔は全く焦っていないようだった。
「いえ、ごめんなさい」
ウォズはピシャリと戸を閉める。この思わぬハプニングは、ウォズも思わずウォズらしからぬ口調にさせてしまい。そしてウォズはソウゴやゲイツと同じく"猿猴橋透子を思い浮かべただけで赤面してしまう人達"への仲間入りを果たすのだった。
あとがき
ウォズの描写難しい。十何話位からジオウ見てないから、キャラの関係性とか口調とか変わってそうやしな……。
後、相方も登場させました。ゆくゆくは作中でネタ一本書きたい。
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作者名：サインバルタ | 作成日時：2019年6月15日 15時
