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彼女は溜め息をつくと 透子の腕を引いて立たせ。「はよネタ合わせするで」と、ぶっきらぼうに言い放った。今日のネタは新作だ。まだネタ合わせもあまりしていない為、本番までみっちりやり込むつもりなのだろう。透子は彼女に引きずられながら「真面目なやつだなぁ」と独り言つ。
常磐ソウゴは絶望していた。それは、帰宅した時に順一郎から告げられた言葉が原因である。
『今日から下宿することになった人がいるんだけど、その子、ソウゴくんと相部屋になったから。色々お願いね』
数時間前のその言葉を思い出しては絶望すると同時に、透子が挨拶品を置いている場所を言わなかった理由が分かり。部屋へと戻ったソウゴは、床に一つ置かれた大きなボストンバッグを見つけると、それを開けた。
「それにしても、なんで俺の部屋なんだろ。女同士なんだからツクヨミの部屋にしたらいいのに」
順一郎が言うに「美少女と相部屋になるとまずいから」などと彼女が言っていたかららしいが。その理由さえ意味がわからない。悪態をつきつつも、ソウゴは透子に言われた通りきちんと挨拶品であろう物が入った箱をバッグの中から取り出した。そしてそれを持って順一郎の元へと向かう。が、その時。
「ジオウ」
突然声をかけられソウゴは勢い良く後ろを振り返った。この家の中でソウゴのことをジオウと呼ぶのは一人しかいない。
「ゲイツ、いつの間に帰ってたんだ？」
「……それより、奴に会ったのか」
「奴って、もしかして……」
「胡散臭くてひょろ長い女だ」
透子のことだろう。彼女もゲイツとツクヨミと会ったような口ぶりをしていたため、ゲイツが彼女のことを知っていてもなんらおかしくない。ソウゴが「猿猴橋透子のこと？」と聞けば、ゲイツはうんざりしたように頷いた。
「僕と相部屋だって……」
「なん、だと……？お前と……？アイツは女だろう」
女。その単語を耳に入れると共に。ゲイツは昨夜自室まで聞こえてきたあの艶かしい声を。ソウゴは先程事故とはいえ触れてしまった彼女の胸の感触を思い出し。顔を赤くして俯いた。
「何想像してるんだ。気色悪い」
「なっ……！ゲ、ゲイツこそ顔真っ赤じゃん！」
二人言い合いをしつつ、食卓へと向かう。なんだかんだで行動を共にしてしまうのは、彼らが実は仲がいい証拠なのかもしれない。
「あ、ソウゴくん。ご飯できてるよ〜。ゲイツくん、呼んできてくれてありがとう」
既にツクヨミとウォズは食卓についていた。
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作者名：サインバルタ | 作成日時：2019年6月15日 15時
