・ ページ34
それを枕にして彼女はゆっくりと目を閉じた。俺は頬杖をついて彼女が眠りにつくのを見つめる。眠りに入るまでの数分の間、彼女は目を閉じて何を考えているのだろうか。安らかな顔しているし、友達のこととかアイドル活動のことだとか。……俺の事を考えているんじゃないかと思ってしまうのは、少し自惚れ過ぎだろうか。少し腰を浮かし、西城の頭に手を伸ばす。そして壊れ物に触れるようにその黒い髪を優しく撫でると。彼女は少し頬を緩ませて小さく呟いた。
「先生、中学の時みたいに名前で呼んでくれませんか……？」
まさか話しかけられるとは思っていなかった為、驚いて少し手を引っ込める。中学生の時って確か……。
「季実子ちゃん」
「……えへへ」
名前を呼べば、西城は嬉しそうに笑いながらタオルに顔を埋めた。顔が赤いのを隠しているのだろうが、耳まで赤くなっているのでバレバレである。
「おやすみなさい」
「あぁ」
程なくして季実子は完全に眠りに入った。すやすやと寝息を立てているのが聞こえる。俺もそろそろ一息入れるかと立ち上がり、机の端に置いていた空のペットボトルをグシャリと潰した。空調のせいか少し喉が痛い。水でも買ってくるか。西城の後ろを横切り扉を開ける。そして自販機のある方向へ向かおうとそちらに顔を向けると、こちらへやって来る二人の生徒の姿を見つけた。
「あ、お父さん！」
娘の美空と、それに着いてきたらしい桐生だ。駆け寄ってくる二人に問いかける。
「どうした？」
「戦兎に試験勉強見て貰ってたんだけど、他の女の子達が凄い集まってきちゃってさ……。物理準備室使わせて貰えないかなぁと思って逃げてきた」
「俺は別に構わないけど……。今季実子が寝てるから、静かにしてくれるなら」
「あ、もしかしてわたし達邪魔だった？」
「何言ってんだよ」
軽く美空の頭を小突くと、桐生が複雑そうな表情を見せながら「そうだよ」と俺に同調した。全く、桐生の事も考えてやってほしいものだ。気づいていない訳では無いだろうに。扉を開け、二人を中に促す。俺は当初の予定通り、水を買いに自販機の方へと足を運び始めた。
─────
戦兎と美空が準備室内へ足を踏み入れると、そこには惣一の言った通り季実子が机に突っ伏して眠っていた。足音や扉を閉める音でも全く起きない辺り、余程爆睡しているのが見て取れる。戦兎はそんな季実子にくすりと笑うと、部屋の隅に畳まれていたパイプ椅子を季実子の隣に置き、そこに座った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サインバルタ(プロフ) - 雪華さん» ちょっと存じ上げませんね… (2020年7月22日 21時) (
レス) id: 4afdb47c62 (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - トランスフォーマープライムは知っています？ (2020年7月22日 16時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
サインバルタ(プロフ) - 横峯俊さん» わ〜（泣）ありがとうございます…！生憎只今一旦全て消して書き直ししているところですが、もっと良いものを書けるよう頑張りますので今後ともよろしくおねがいします…！惣一貴利矢さん推し見つけられて滅茶苦茶嬉しいです…！ (2020年1月26日 18時) (レス) id: 4afdb47c62 (このIDを非表示/違反報告)
横峯俊(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらっています！惣一さんも貴利矢先生も小説が少ないので、毎回楽しみにしています！ (2020年1月25日 9時) (レス) id: e7388357bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サインバルタ | 作成日時：2018年12月21日 5時
