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凄い。青春ドラマみたいな展開だ。零子ちゃんの方に視線を戻すと、九条先輩の登場に驚いたように口をあんぐりと開けている。
「零子は……」
まずい、今まであんなに隠していたのに。ここで？いやいや、まさかそんな迂闊な事をあの九条先輩がするわけ……。
「自分の彼女なんだけど」
言ったっ──！言ってしまった！これには他の生徒達も驚き混じりに騒ぎ立てる。更に女子の何割かからは悲鳴が聞こえてきて。まぁそうなるよなぁ。きっと花家先輩や九条先輩の事を好きな人は結構居ただろうし。悲鳴を上げたくもなるだろう。
「驚きの展開が続きますが、信じられません！本当に九条貴利矢は彼女と付き合っていると言うのでしょうか？音無さん、九条くんはそう言ってるけどホントなの？」
零子ちゃんは少し口を噤み、辺りを軽く見回したあと、花家先輩の方をちらりと見た。そしてまた九条先輩の方を見つめた後、うんざりしたようにふぅっと息をついて──。
「……確かに。付き合ってる」
「……零子！」
九条先輩の表情が明るくなった。と、同時に彼は両腕を思いっきり広げ、零子ちゃんに飛びつく。しかし、零子ちゃんは「抱きついていいとは言ってねぇ！」と怒鳴りながら九条先輩の抱擁を突っぱねていた。よかった、カミングアウトはしたもののいつも通りだ。テントの方からもちらほらと笑いが漏れている。やっぱり、この二人は最初から隠す必要なんて無かったんだろうな。一瞬呆然とした様子の司会者生徒は、おもむろにマイクを持ち直し呟くように「花家選手、目の前で失恋してしまったようですが……」と、言いかける。が、すかさず花家先輩がその手をぐいと降ろさせ、彼の言葉を遮るように言い放った。
「してねぇ」
「は？」
「こいつらが付き合ってることぐらい元々知ってる。だが、ンな事は関係無ぇ」
「へぇ、自分と張り合おうってわけね。ま、負ける気無いけど」
「……！！花家選手！まさかの宣戦布告！九条くんもかなり乗り気のようだ！」
更に衝撃的な事実。一体いつどこで、彼はこの二人が付き合っていると知ったのだろう。いや、そもそもいつ彼は零子ちゃんの事を好きになったのだろう。見た感じ、花家先輩と零子ちゃんは知り合いというわけでもなさそうだし。謎が多すぎる。ゲームセンターで一度会ったと言っていたが、その時だろうか。そんなに絡んでもいないのに、彼氏が居ても構わないと強い想いを持っていただなんて。
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作者名：サインバルタ | 作成日時：2020年11月6日 10時
