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団結力だけは負けないC組の意地に賭けて、ここで追い抜かなくては。ただただ前を見据え、ゴールに近い三年生のテントの目の前を回る。もう少しだ。もう少しで……！そう思った次の瞬間。
「零子ー！抜け〜！」
いやに間延びした、聞き覚えのある……。いや、ほぼ毎日嫌というほど聞く声が三年生のテントから聞こえてきた。視界に入った貴利矢の周りの生徒達が貴利矢の方を勢いよく振り向いたのが目に入り、あたしも思い切りそちらの方を振り向く。それはほぼ衝動的であった。
「貴利矢てめぇ大声で名前で呼ぶなって！……わわっ！？」
今の状況を忘れ、怒りに任せて勢い良く振り向いてしまったせいだろうか。あたしはそのまま足を縺れさせ、バランスを崩して地面に膝を着いた。三年生のテントの方から「零子！？」と身を乗り出す貴利矢の姿が視界に映る。が、その後すぐに万丈があたしの顔を覗き込み「零子！大丈夫か？」とあたしの脇を支え、立たせてくれた。……ん？万丈、今。
「あ、あぁ……。ありがと」
動揺しつつも、また走り出す。再びB組との差は付いてしまったがビリにはなっていない。あとの二組で巻き返せることを願うばかりである。
「アタシが仇討ってやんよ！」
そう笑ってあたしの肩を叩く梶はとても頼もしいし、他のクラスメイト達もあたしを責めることはしなかった(どちらかと言うと皆、邪魔をしやがってと貴利矢に怒っていたようだ)。その一方で、A組の方は何やら険悪なムードが漂っている。先程永島がコケてしまったことにより、奴はクラスの連中から総スカンを食らっているようだ。何を体育祭の一競技如きでとは思うが、奴らにとってはそうではないらしい。明日那や宝生らが永島を庇っているおかげで大事には至っていないらしいが、少しかわいそうに思えてしまう。季実子もペアだったわけだし、さぞかし心配していることだろう。と、思って季実子に目を向けると、奴は特に気にするでもなく教員席を眺めながらぼーっとしているようだった。この騒動に気づいていないだけなのかと思ったが、察しのいい奴に限ってそれはない。きっと、ただどうでもいいと思っているだけだ。あたしはやれやれとため息をついて、季実子の隣に座り込む。
「お前な……。ちょっとぐらい永島のこと気遣ってやれよ」
「……え？なんで？」
あっけらかんと答える季実子。まぁ、そうだよな。こいつにそんな対応を期待したあたしが馬鹿だったのかもしれない。
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作者名：サインバルタ | 作成日時：2020年11月6日 10時
