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体育館には入らず、外周を回り体育館裏へと辿り着く。するとそこには、予想通り花家と零子の姿があった。すぐに二人に飛びかかろうとしたのだが、自分は零子のその顔を見て、思わず足を止めてしまった。距離が遠いのと、あちらが木陰にいるので自分の存在には気づいていないようだが。
自分が目を見張ったのは零子の表情だった。だって、あんな顔。……自分は知らない。下がった眉尻、赤らめた頬、弱々しく揺れながら他所へ向けた視線。いつも隣にいるから、零子の知らない顔なんて無いと思っていた。笑った顔も、怒った顔も、照れた顔も。全て知り尽くしていると思っていたのに。今日初めて知り合った男に対して見せるあの表情は、自分でさえも見たことがない。ただ照れるというだけではない、とてもしおらしい表情。普段の自分なら怒って二人の間に割り込むが、何故だか今だけは足が竦んでいた。
「なんだよ、その顔……」
しかし自分の存在に気づいていない零子が、その問いに答えることはない。体育館裏にまで照りつけられた太陽がやけに熱かった気がするのは、きっと彼女のその表情に衝撃を受けてしまったからなのかもしれない。
↓おまけ
永夢「フォークダンス……季実子ちゃんと踊れた……えへへ……」
季実子「よかったねー」
飛彩「目の前に本人が居るのに、そんなに喜ぶことか？」
永夢「だ、だって、なんかこう……好きな子と一瞬だけでも手を繋いで踊れるなんて、青春みたいじゃん！」
明日那「みたいっていうか、まぁ……本当に青春を楽しんでるね、永夢は」
飛彩「しかし、あまり喜んで騒ぐな」
永夢「なんで？」
季実子「戦兎先輩が永夢くんに殺意を向けてるから」
永夢「ひえ……」
→【八月一日】
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作者名：サインバルタ | 作成日時：2020年11月6日 10時
