七月二十二日【体育祭（前編）】 ページ1
「あ〜！季実子ちゃん似合う〜！」
「明日那ちゃんもやったら？」
「そうしよっかなぁ。あ、ねぇ！零子ちゃんも一緒にしようよ〜！」
「やだよ気色悪い」
なんとか体育祭の準備を終わらせ、幻夢高校は無事体育祭当日を迎えた。天気は快晴で、まさに体育祭日和と言えるだろう。
開会式直後。二年生の待機場所の後方で、あたし達はテントに入らず立ったまま駄弁っていた。季実子は先日皆で作り上げた赤いハチマキを頭の上でリボンのように結んでおり、明日那にも少し左寄りに同じように結んでやっている。あたしはC組の青いハチマキを他の女子らと同じく適当に前髪の辺りに掛けて結び、準備万端だ。
「最初はなんだっけ？」
テントの柱に貼り付けられたプログラム表をまじまじと見つめる。
「クラス選抜100m走で……」
「その次がフラッグ演技かぁ。めんどくせぇなぁ」
入場門には既にクラス選抜の生徒達が集まっていた。100m走はA組もC組も特に仲のいい人は出ない為、特に応援する理由もないだろう。と、そうこうしている内に、女子らに入場門への招集がかかる。あたし達は入場門の方へと移動しながら話を続けた。
「でもその後はクラス選抜200m走と女子選抜800m走と男子選抜1500m走が続いて、その後男子の団体行動だから……。この辺は結構ゆっくり出来そう」
「でもあたしはリレーもあるからなぁ。面倒くせぇ」
明日那と季実子は「大変そうだね」と苦笑いする。二人はリレー選抜には抜擢されなかったらしい。リレーは各クラスの男女が交互にバトンを受け渡していく競技であるから、A組は先に出場が決まっていた宝生や鏡とバトンの受け渡しをしたい女子達で戦争が起きていたそうだ。二人ともそんな争いに参加するような柄じゃないし、辞退するのが普通だろう。代わりに二人は借り人競争とやらに出るようだが。
「わたし達、A組応援しなきゃいけない立場だけど……。正直零子ちゃんも応援しちゃうよね」
「万丈も応援してやれよ」
「嫌よ。寧ろコケたらいいのに」
「ひでぇな……」
待機場所に着くやいなや、あたし達は自分の列へとそれぞれ入って行く。100m走は青組──つまりC組が勝利を収めたようだ。幸先いいスタートである。まぁ別に体育祭の勝敗自体には興味ないから別にどうでもイイんだが。
フラッグ演技は難無く終わった。体育の時間に練習して来た事をやるだけだし、当然は当然だが。
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作者名：サインバルタ | 作成日時：2020年11月6日 10時
