【マイクラ】スケさんに懐かれた【長編】 (ページ3)

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わたしは持ち前のポジティブシンキングで気持ちを切り替えると。先程豚が走り去った方へと歩みを進めた。現実版Minecraftだと思えば簡単なことだ。今までゲームでプレイしたことと同じことをすればいい。

少し歩くと、先程走り去った豚が水辺に佇んでいた。なるほど、水が近場にあるのは助かる。ここに最初の拠点を作ろうか。

……しかしそれにしても、気になることが一つ。この世界の物質はどういう感触なのだろうか。水だろうとマグマだろうとブロックにしか見えないし。喉が乾いて水を飲むにしても、本物の水の感触はするのだろうか。わたしは水辺にしゃがみこむと、そっと手を水面に触れさせた。

「わっ、すごい！」

思わず大声が出る。とても面白い感触を体験してしまったからだ。

まず、最初に触れた時は冷たい固形物のような感触だった。そこまで硬くもなく、発泡スチロール位の硬度だろうか。だが、すぐにそれは溶けるように柔らかくなっていき、手を沈めていけば普通の水のような感触へと変わっていく。恐らく、触れた所が本物の感触になってくれるのだろう。掬い上げて落とせば、吸収されるかのようにまたブロックへと戻る。

わたしは面白くなって、他の土や花、木等にも触れてみた。先程の水とは違い、冷たくは無いが固形物から本物の感触に変わるのは本当のようだ。足踏みすると、きちんと土の感触が戻ってくる。

花の香りもする。初めての体験に興奮して走り回っていると、わたしはあることに気がついた。空が赤らんできているのだ。

まずい。

Minecraftの世界では夜になるとモンスターが湧き、一斉に人間に対して襲い掛かってくる。このままではわたしもモンスターの餌食だ。これから拠点を作るのは間に合わないだろうし、わたしは近場にあった丘に横穴を掘ってそのまま一夜を過ごすことにした。

早く、急がないと。

しかし、その焦りがいけなかったのだろう。段々暗くなる空の下で、注意力散漫になってしまうのはよくない。それなのにわたしはゲーム中に学んだそれも忘れて、足元を見るのを忘れてしまっていた。

結果、当然のようにわたしは隠れていた崖から真っ逆さまに転落してしまったのである。こちらからは丘に見えた地形だったが、本当は小高い山の中腹だったようだ。

先程の豚がこちらを覗き込み、すぐにまた去って行く。野次馬ならぬ野次豚か、薄情者め……。