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俺達が最初に魔王を倒した時よりも遥かに昔の話なので、真実かどうかは俺達にも全くわからないといったところである。
兎も角、その英雄の塔とやらに、伝説の武器をササラの村から盗んだ盗賊がいるというのが、村長の話であるからして、俺達はこの生きて帰ってきた者のいないという英雄の塔に登らなければならない。
にしても、その盗賊とやらは、どうやってこの塔に登ったというのだろうか。
考えているよそで、他の四人の会話は進む。
「えぇっ、そんなん無理じゃん……」
「いえ、五人で力を合わせればきっと大丈夫です。行きましょう」
「まぁ、ヨシヒコがそう言うなら、行くしかないな」
ダンジョーの言葉に、全員が頷く。
そして、塔の入り口へと歩みを進める。
罠が盛り沢山ということだが、まさか入り口から罠があるということは……。
「出鼻からこれか」
罠は無かったが、ややこしい問題が発覚する。
「むぅ……。別れ道」
「しかも道は三つ……。うむ」
「どうする？」
「わたしたちも、分かれて行くしかないでしょう」
ヨシヒコの言う通りである。
しかし、三つに分かれるとなると、誰かが一人になるということだが。
「では、わたしは右の道を行こう。一人で構わん」
「え、ちょっと。どんな罠があるかわかんないんだよ。一人で大丈夫？」
心配そうに聞くムラサキ。
Aは何年も一人で旅をしてきたと言うし、罠など余裕でかわせるかもしれない。
が、やはり女を一人で行かせるのは心配だ。
「ああ。どうってことはない、任せろ」
Aはなんでも無さそうにそう言う。
俺も共に行こうと思ったが、逆に足手まといになりそうで、申し出ることができなかった。
「そうだな、Aなら大丈夫だろう。では俺は、メレブと真ん中の道を行くことにしよう」
「………うむ」
「では、私とムラサキは左の道ですね」
そしてあれよあれよという間に、チーム分けが済んでしまったのだ。
「もし行き詰まったら、入り口で全員を待つことにしよ」
ムラサキの言葉に同意し、皆はそれぞれ、一斉に別れ道を進みはじめた。
ただ俺は、Aを一人にした不安に、何度も後ろを振り返る。
―――――
生きて帰ってきた者の居ない、何百人もの死者を出したという、英雄の塔。
そんな危険すぎる場所にいるというのに、何故かわたしは浮き足立っていた。
他でもない、ヨシヒコと二人きりだからである。
「ムラサキ、油断していると罠にかかる。慎重に行くぞ」
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作者名：うれい | 作成日時：2017年12月28日 5時
