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でも、とにかく、抱き締めたい。

何も考えずに、Aを抱き寄せて、思いきり抱き締めてしまいたい。

「……めれ、ぶ」

あ、これアカン。

 彼女の小さな唇から俺の名前が漏れた途端、俺は数秒間胸がつまり、意識を手放しそうになった。

しかし、なんとか一命を取り止めた俺は、我に返りサッと手を離す。

起きたかもしれない。

眠ったフリをしよう。

「さむい……」

上半身を起こしたのだろうか。

一際大きな衣音が聞こえる。

そして寒いと言った彼女は、またゴソゴソと何か動き始め……。




え。



ちょ、



なにしてんのこの子!

満足そうにムフーと息を吐いた彼女は、俺の背に手を回し、俺の胸元へ顔を埋める。

あ、あったかい……。

じゃないじゃないじゃないじゃない。

無理無理無理無理本当に死ぬ。

あああああああ痛い痛い痛い痛い痛い心臓が今までで一番痛い!!

マジで何してんだコイツ!絶対に寝惚けているな。

勘弁してくれ。

人の気も知らずいい匂いさせやがって……!

あっ、限界だ、死ぬわ俺。

 衝動的に。

いや、悪気は無かった。

本当だ。

気づいたら両手が彼女の背中に回っていたのだ。

片手は、Aの首の下敷きになり、軽い腕枕状態である。

ギュッと抱き締めれば、心臓の痛みは嘘のように治まった。

 だが、緊張状態が解けないのは相変わらずで、俺は理性を繋ぎ止めるので精一杯だ。

あぁ、でもわかったな、コレ。

A、ごめん。物凄く単純だけど、キスをされたあの時からお前のこと……。


-----


 朦朧とする意識の中、周りを誰かが歩く音がした。

その音は俺の真隣りで止まり、数秒経つ。

あぁ、もうそんな時間か。

それにしても、変な夢見たな。

やっぱり色々拗らせてんのかな、俺も。

まさかAが俺の。

「てめぇは何やってんだ、この、えろ魔法使い」

「ぐごっ!」

 横腹への突然の攻撃に飛び起きた俺は、声の主に抗議する。

「ちょ、何をしてるのムラサキ………さぁぁぁぁっ!?」

「スゥ……スゥ……」

そこで、気持ちよさそうに俺の布団で眠るAに気づく。

そうだ、昨日Aが俺の布団に入ってきたんだった……。

夢じゃなかったんだな。

あ、やばい、腕痺れてる。

「なんでAを布団に連れ込んでんの?皆で寝てるなかでさ。え?」

「違っ!Aが昨日寒いっつって潜り込んできたの!」

「だからなんでわざわざてめーの布団に入るんだよ、嘘つけ」

・→←第九話【英雄の塔】



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作者名:うれい | 作成日時:2017年12月28日 5時

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