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第54話 ページ6

「…なにしてるの?」

Aがハンジの執務室の扉を開けると、ハンジとモブリットが床を這いつくばっていた。
そんな2人を横目に、Aは手に持った書類を自分の机に置く。

「また何か失くしもの?」
「そうなんだよ〜」
「まあ、これだけ乱れてたら、見つかる物も見つからないでしょ」

Aの小言が始まる。

「モブリット君もついていながら、ちょっと私が掃除しなかったらすぐにこんなに散らかして…」

モブリットも肩をすくめた。
今までAが1人で片付けていたハンジの執務室は、Aが少し手を抜くとこの有様だ。

「大体こういう書類だってちゃんと「モブリット!買い忘れた道具があるんだ!一緒に行こう!」

Aの言葉を遮ったハンジが部屋を飛び出していく。
それにモブリットも続いた。

取り残されたAは、「まったく」と呟きながら簡単に部屋を片付ける。

何冊かの資料の束を持ち上げると、コン、と音がして何かが落ちた。
見ると小さな鍵だ。
もしかしてこれが探し物では?と思ったAは、鍵をハンジの机に置いた。


それからしばらく、机で仕事をしていると、ドアがノックされて開く。

そこにいたのはエルヴィンで、2人して一瞬固まった。

「なに?」

先に平静を装ったのはAの方だった。
いつもと全く変わらないその様子につられるようにしてエルヴィンも持ち直す。

「ハンジは?」
「今さっき出て行った。どうしたの?」

エルヴィンは少しだけいつもよりも控えめだ。

「いや、俺のジャケットを昨日、帰りの馬車に忘れた様でな。知らないか?」
「知らない」

昨日、という単語で一気に空気が変わる。

「ハンジに聞いとく」
「A、昨日君は急いで帰ってしまったが、「エルヴィン」

Aは苛ただし気に顔をあげた。

「その話はもういいの。やめて」
「だが」
「もう決まったことなんでしょう?そこにどんな理由があろうとも、エルヴィンではどうにもならないような事情がある程の」
「…」
「ならもう言わないで。私としても聞きたい事はあるけど。今引いてくれるなら明日からも全く今まで通りにできる」
「A…」
「親切でしょ?貴方が色々言いにくい事を全てそのまま受け入れて、関係を終わらせられるのよ。婚約話の障害にならないようにね」

取り付く島がないと思ったエルヴィンは、納得できていない表情のまま部屋を出ていった。

ドアが閉まると、Aは少しだけ頭を抱えた。

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作品ジャンル:恋愛
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時

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