第95話 ページ48
リヴァイとハンジの目の届かない場所まで走った2人は息を整える。
「ああ…良かったのかしら」
ハンジの事を案じているAにエルヴィンが微笑む。
「大丈夫だ。2人で抜けろと言ったのはハンジだ」
「え!?」
「気を聞かせてくれたんだろう。ハンジはハンジで、リヴァイと出かけるらしい」
「…やっぱりハンジ、リヴァイの事「A」
エルヴィンはAの言葉を遮ると、左手を差し出す。
「今はいいだろう」
「…いや、恥ずかしいから」
「これだけ人が多くて俺達も私服だ。分からないさ」
エルヴィンは半ば無理矢理Aの手を掴むと歩きだす。
2人は祭の続きを楽しんだ。
―――
それから数時間後。
食事に行こうと言われてAは着いて行った。
まだ時間が早い気がしたが、それを言うと「いいから」とだけ言われる。
着いたのは小さな一軒家だった。
「今日だけ借りたんだ」
エルヴィンが鍵を開ける。
室内は一通りの家具が置いてあって、普通の家みたいだ。
「俺が何か作るよ」
「料理できるの?」
「ああ。君に振舞おうと思ってな」
キッチンにはすでに材料が用意されていて、エルヴィンはジャケットを脱ぐとそちらに向かう。
「エルヴィン、右手が無いのに大丈夫?」
「それでも君よりも上手だと思う」
「それはないでしょ。手伝う」
Aもエルヴィンに着いてキッチンに立った。
エルヴィンの手伝いをすると言ったものの、Aは完全な足手まといで、最終的に鍋をかき回す係になっていた。
「情けないわ。もっとやれると思ってた」
「いいじゃないか。それだけ長時間鍋をかき回せるなんて、日頃の鍛錬の賜物だ」
「じゃあ兵士を引退したら、鍋かき回す仕事につくわ」
「兵士を辞めたら、か」
エルヴィンが作った料理は凄かった。
いっぱしのフルコースだ。
テーブルに並べるのはAが引き受けて、エルヴィンは椅子に座って待つ。
「凄いわね」
「右腕があればもっと早く作れたんだがな」
「十分でしょ。今日は時間があるんだし」
Aは料理を並べ終えて、エルヴィンの正面に座った。
「うわ、おいしい…」
料理に舌鼓を打つAにエルヴィンは笑う。
「しかし時間がかかってしまったな。ちゃんとしたレストランの方が良かったか?」
「そう?エルヴィンの負担にならないなら全然こっちの方がいいけど」
Aは見た目が派手なので勘違いされやすいが、本当は静かな場所が好きなのだ。
それを理解しているエルヴィンはただ微笑む。
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時