第92話 ページ45
翌日、ヒストリアの戴冠式に参加した後、調査兵団はしばらくの休暇を与えられた。
今回の王政奪還作戦と、レイス巨人の掃討で調査兵は疲弊しきっていたからだ。
Aも流石に久しぶりの休暇は嬉しくて、式の後は執務室に行って休むための準備をしていた。
(ハンジとどこか行こうかな)
そんな事を考えていると、執務室のドアが開く。
入ってきたのはエルヴィンだ。
「?エルヴィン、どうしたの」
「ハンジに聞いたんだ。休みの前にここで片づけをしているとな」
穏やかな表情のエルヴィンが、後ろ手にドアを閉めた。
「明日は暇か?」
「まだハンジとも約束してないから。暇」
「なら、前に話した通り、食事に行こう。」
Aは少しだけ戸惑った様子を見せたが、「分かった」と頷く。
「あと、…」
エルヴィンが少し言葉を詰まらせた。
「明日は、新女王の誕生を祝う祭があるらしい。…一緒にどうだろう」
「うん。行こう」
即答された事にエルヴィンはとても驚いた。
自分から誘っておいて一瞬目を見開いたが、すぐに微笑みを浮かべる。
「…そうか。では明日、宿舎前で待ち合わせよう」
エルヴィンは丁寧にそう言って部屋を出て行った。
部屋を出てすぐ、小さくガッツポーズを作って「やったぞ」と呟いたことは誰も知らない。
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「ええええ!それってデートって事!?」
「また…」
その晩、Aの部屋でワインを飲んでいたハンジが迫って来た。
「デートって言うか。ただ出かけるだけよ」
「いやいやいや!でもさぁ!前までのあなたなら、「ハンジの予定聞いてからじゃなきゃ無理」って冷徹に断ってたよ!?」
「冷徹って…」
「あのさ、A」
ハンジはため息交じりにそう言ってテーブルに肘をつく。
「もうエルヴィンじゃなきゃダメなんじゃない?あなた」
「…んーどうだろう。ちゃんと考えた事ない」
「全く。相変わらず自分の気持ちを見ようとしないね。リヴァイが可哀そうだよ」
「えっ」
急にハンジが立ち上がる。
今日は夜更けまで一緒に飲むはずだったのに、部屋を出て行こうとするハンジを呼び止めた。
「ごめん。あなたはまったく悪くない。ただ、なんか私が変でさ。余計な事言いそうだから今日は帰るよ」
「…ハンジ。もしかして、」
「明日にはいつも通りになるからさ!お休み!!」
ハンジは空元気にも見える様子で部屋を出て行った。
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時