第89話 ページ42
それから自分の身体の状況を色々知った。
Aはナイルと言い合いをした後、薬を打たれたらしい。
あの時の物は副作用がかなり強いものだったらしく1日半寝ていたそうだ。
「恐らくそれを打たれてしばらくで助け出されたので、まだ薬の作用で体がしびれたような感覚が残っていると思います」
「…確かに」
「自然回復で治るでしょう…ただそれよりも」
「?」
「乱暴されたかもしれません」
「…それは分かっています。でも多分、ここは何もされていないかと」
「なら良かった。貴方の意識が戻らなかったので、念のため処置はしていますが、万が一にも中に出されていた場合100%とは言い切れません」
「はい。分かっています。ありがとうございます」
ベッドに座ったままお辞儀をしたAに医者は頷く。
「とりあえず今日は食事をしっかり摂ってください。貴方が元気なら明日にでも退院していただいて結構です」
「あの…エルヴィン団長は…」
「外傷だけで言えばあの人の方が凄い怪我をされていたのですが、やはり単純な打撃を受けていただけの鍛え抜かれた男性は回復が早いですね。貴方の様に何かを投与もされたわけでもありませんでしたし、解放されてすぐに仕事をされていました」
呆れた様にそう言った医者だが、どこかホッとした顔をしていた。
その後シャワーを浴びてしばらくすると、ハンジとエルヴィンが入って来た。
Aが目を覚ましたことをリヴァイに聞いたらしい。
「Aー!!」
大声で叫んだハンジに抱き着かれる。
ハンジは泣いていた。
ハンジを落ち着かせてベッド脇の椅子に座らせると、一息ついて今の状況を教えてくれる。
ヒストリアとエレンが攫われて、それをリヴァイ達と奪還した事。
それをきっかけに、ヒストリアの父親が巨人化して壁に迫っていた事。
その巨人のとどめを刺したのがヒストリアで、彼女が女王として明日冠をいただく事。
「私、凄いタイミングで眠ってたのね。ハンジも怪我をしてるし…最悪だわ」
頭を抱えたAにハンジが微笑む。
「いやいや、とんでもない!あなたが起きてたら無理にでも参戦するって言って聞かなかったろうからこれでいいんだよ!ま、とにかく今日はゆっくり寝て、ちゃんと食べて、明日の戴冠式には行こうよ!」
嬉しそうにそう言ったハンジに、Aは頷いた。
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時