第87話 ナイル好きは閲覧注意 ページ40
Aが牢屋でじっとしていると、地下牢の扉が開いてナイルが入ってきた。
「エルヴィンが拷問を受けているぞ。お前のせいで」
牢の正面の椅子に座りながらナイルが言う。
Aはゆっくり体を起こす。
ベッドから足を下ろすとすぐそこに鉄格子がある。
「なんで私のせいなのよ。鬱陶しい。どっかいって」
ガシャン、と凄い音がする。
Aが鉄格子を蹴った音だ。
ここに来てからの彼女の威圧感に圧倒されているナイルは冷や汗をかいたが、すぐに眉間にしわを寄せる。
「やめておけ。お前が何かすればするほど、エルヴィンの立場が危うくなる」
Aが暴れたり死のうとしたら、エルヴィンへの拷問を強くすると言われていた。
どこまで彼が本気で約束を守ろうとしているのかは分からないが。
危うくなる…だって、ナイルの匙加減だ。
「A。お前が今の状態で済んでいるのは俺の口利きあってのことだと分かってるのか」
「この状況を喜べと?」
すでに多くの調査兵が拘束されているが、エルヴィンと親交のあった者はこうして別の房に入れろとのお達しだったらしい。
「とんでもなく強い薬で眠らされて気分は最悪。こんなの繰り返してたら頭がおかしくなるわ」
「上がここに来た時に昏睡状態にしておかないと連れていかれる可能性があるからだ。我慢しろ」
ナイルは言い聞かせるように鉄格子に近づく。
「このままだと、エルヴィンの口を割らせるためにお前が先に処刑台に送られる。もしくは中央憲兵の玩具だ。エルヴィンをお前から説得をしろ」
「なら殺して」
「そうはいかないから困っている。俺はお前を死なせたくない。…惚れた女だからな」
「奥さんと子供がいる癖に」
「お前がなびいていれば結婚しなかった!妻はエルヴィンと俺を天秤にかけていたような女だ」
「なら貴方だって、私と奥さんを天秤にかけてたんでしょ。似た者夫婦ね」
「A…。俺は、今だってお前が良いと言ってくれるなら」
「…ふーん。そういう人になれって話?」
「…」
Aは口の端をあげる。
「私に力では勝てないから眠らせて、寝ている間に身体を触ってるんでしょう。挿れられてはいないみたいだけど…これ」
そう言ってベッドのシーツの汚れを指さす。
「私の身体を触ってはこの辺にぶちまけて出て行ってるのね。万が一私に子供が出来たら困るもの。貴方のそういう気弱なところは大好きよ?…気持ち悪くて」
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時