第84話 ページ37
馬車の手配をして病室に戻ると、エルヴィンはすでに手紙を書き終えていて、ベッドから立ち上がっていた。
シャツのボタンを外すのに苦労している。
Aは何も言わずに近づくと、手早く病院着を脱がせて、ハンガーにかかっていたエルヴィンのシャツとジャケットを出して着るのを手伝う。
エルヴィンは服を着ると、先ほど書き上げた手紙を差し出した。
「俺はこの後、拘束されるかもしれない」
「…え?」
「調査兵も拘束の対象になりかねない。その場合、幹部のハンジも危なくなるだろう。リヴァイは自班の事で手一杯になるだろうから、君がハンジの傍にいるんだ。俺が拘束されたらハンジを頼るほかない」
「分かった」
ハンジの名前に反応してAが頷く。
色々気になるワードは出てきたが、細かい事を聞かずにただ頷くのは、エルヴィンを信用している証だ。
病室を出ようとしたエルヴィンをAが引き留める。
「エルヴィン」
「なんだ」
「あの夜に話した、ハンジやエルヴィンに命の危険がせまったら…って話、覚えてる?」
「…」
「なんだか嫌な予感しかしない。あの時言った事、忘れないで。…エルヴィンやハンジの弱点になりたくないの。どんな状況になっても、私の事は案じないで。動揺せずに見捨てて」
「A」
「じゃあ、行くから」
Aはそう言い捨てるように言うと、エルヴィンの手紙を持って先に病室から出て行った。
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時