第79話 ページ32
馬車が兵団病院に近づくと、リヴァイが門の前に立っているのが見えた。
「リヴァイが来てくれたのか?」
「ええ。着替えもあるだろうからって。そのまま報告もするって言ってたから、後でハンジも来ると思う。あ。私の実家にいたっていうのはリヴァイとハンジにだけ言ってあるから」
「君はどうするんだ?来ないのか」
「私は私でやることが沢山あるの。今回の壁外調査は他兵団も亡くなった人が沢山いて大変だったんだから」
「そうか。…しかし2日近く君といたから、名残惜しいな」
そう言って手を握ってきたエルヴィンの手の甲を軽くつねる。
エルヴィンは表情を変えずに、つねれたところを撫でる。
何年か前のエルヴィンを見たようで、Aは微笑んだ。
「甘えないで。貴方はまだお嬢様の婚約者でしょ。変なところを見られて賠償金がどうとか言われたら元も子もないじゃない。…そんなに寂しがらなくても、彼女もお見舞いに来るって言ってたわ」
「まだそんなことを」
「私はそういうゴチャゴチャした事に首を突っ込みたくないの。ソッチをちゃんとしてくれたら私もちゃんと…」
「ん?」
「まあ、それまでは私も好きにさせてもらうという事で……着いた」
ポロッと零れたAの言葉に反応したエルヴィンだったが、聞き返す直前に馬車が病院の前で止まって扉が開かれた。
先にエルヴィンを下ろすと、Aはリヴァイに荷物を預けて、そのままその馬車で兵団詰め所に帰ると言ってまた馬車に乗り込む。
馬車が出る直前。
「A」
リヴァイが呼び止めた。
「夜、空けとけ。飯に行くぞ」
リヴァイはそれだけ言うと、自分を凝視しているエルヴィンを尻目にAに手を振った。
26人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時