第77話 ページ30
「エルヴィン」
「なんだ」
ベッドに横になるのを手伝ったAは、シーツをかけながら言う。
「私。やっぱりエルヴィンには生きていてほしい」
「…」
「この先、何かあって、エルヴィンに命の危機が訪れたら」
Aは真剣な面持ちだ。
「その時私が何をしても、動じないで」
その嫌な響きにエルヴィンは眉間にしわを寄せる。
「何かあって、私がどんな状態になっていても信じてほしい。自分の命を粗末にはしない。自暴自棄になったりもしないから」
「何か怖いな。どんな状況を想定しているんだ」
「これはハンジにも言ってる事なの。何も想定はしていないわ」
心配そうなエルヴィンにAは微笑みかける。
「私が体を張って何かをしたら、考えがあってそうしていると知っていてほしい。ただそれだけ。今回の事でエルヴィンは歳の割にすごく無茶するって分ったし、調査兵団になにかあったら今度はハンジが無茶しそうだしね」
Aはそう言うと立ち上がる。
「じゃあお休み。向こうに移動したら報告の山でゆっくり話すことは出来ないと思う。だから今日は一緒に過ごせてよかった」
「なんだか、やけに素直だな」
「…そうね。エルヴィンが死んじゃうかと思った時に沢山後悔したから。どうしてエルヴィンとちゃんと向き合ってこなかったのかって。エルヴィンだけじゃない。自分自身や両親、リヴァイや他のみんなとも。私はいつもそうだった。誰とも向き合ってこなかったの。それが楽だから」
「A…」
「だから元気になったら、食事に行こう。約束したわよね」
エルヴィンは頷く。
「今度はエルヴィンの話、全部聞く。嫌な話でも良い話でも、途中で遮ったりしない。…怒って帰ったりもしないわ。エルヴィンの話が聞きたい」
「…分かった」
Aは今までに見た事がないような爽やかな笑顔を向けて、部屋を出て行った。
エルヴィンは、鼻の奥がツンとするような。
胸の奥が締め付けられるような感覚を覚えた。
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時