第69話 エルヴィン視点 ページ22
エルヴィンが目を覚ますと、白いカーテンが揺れる清潔感のある部屋の中にいた。
起き上がってふと視線を落とすと、ベッドの脇にAがいた。
ベッドに伏せて眠っているようだ。
あの後地面が大きく揺れて、周囲から巨人がいなくなった。
その隙にAが馬に乗せてくれたのを覚えている。
撤退命令をした後、少しずつ麻酔のせいで意識がなくなったのを、彼女が助けてくれたのだろう。
久しぶりに見たその寝顔に、エルヴィンは少しだけ昔の事を思い出す。
-----
エルヴィンが時期調査兵団の団長候補だと言われ、Aと恋人だった頃。
「Aが団長補佐にでもなってくれれば、最強の調査兵団になると思わないか?俺が危険な作戦に出ても、君がその危険から守るんだ」
そう言ったらAは、「最強って…」と笑った。
「あながち冗談でもない。どれだけハンジ最優先の君でも、団長補佐であるなら俺を助けるはずだ」
「エルヴィンの補佐になっても、壁外に行く時は何かしらの理由をつけてハンジの傍にいるように手を回すだろうから、エルヴィンを助けるのは難しいかもね」
「…なら、ハンジと別々の作戦に出るしかない場合はどうだ?ハンジは安全な場所に居て、君は俺達と巨人と交戦中だ。その状況なら」
「ハンジの元に帰らないと、今後ハンジを守る人がいなくなるもの。悪いけど自分の命優先にさせて貰う。その時はサヨナラだね、エルヴィン」
まったく冗談に聞こえない言い方でそう言ったAに、つくづく思い知らされたものだ。
ハンジには勝てない、と。
----
しかし今、目の前にいるAは、あの時すべてを投げ捨てて自分を助けに来てくれた。
あんなにも傷だらけで、泥だらけで、それでも自分を探してあの惨状を走り回っていたのだ。
そして最期になるかもしれないのに、自分を生きて帰すと言って。
ハンジへの別れの言葉まで口にした。
「…助けにきてくれたじゃないか」
小さくそう言ってAの頬に触れた。
「エルヴィンさん!?」
突然耳に響いた大きな声に、ビクッと全身が震えた。
途端に全身が酷く痛む。
目を開けるのがやっとだ。
目も、少し開けただけで眩しくて、少しずつしか開けられない。
ゆっくりを目を開けると目の前には看護師がいた。
「先生を呼んできますね」
そう言って慌てて出て行った看護師に、エルヴィンはただ驚いたように目を見開く。
(さっきのは夢か)
26人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時