第65話 ページ18
「…はっ」
Aはビクッと身体を震わせて目を開ける。
目の前には広い空が見えて、驚いて身体を起こした。
身体になにやら振動を感じたからだ。
「そんな、いきなり動いたらっ」
心配そうにそう言って駆け寄ったモブリットは汚れていて、彼を見たら自分も服が汚れていることに気づいた。
辺りを見渡して理解する。
周りには沢山の馬がいて、少し離れた所にエルヴィンもいた。
(そうだ…確か超大型巨人が現れて…蒸気みたいなもので吹き飛ばされて)
そこまで思い出して目を見開く。
「ハンジは!?」
「今さっき目を覚まして、あちらで団長とお話を。立ち上がることも出来ないみたいで」
言われてそちらを見ると、ハンジは寝ころびながら何やら地図を指し示している。
「大丈夫ですか?吹き飛ばされたハンジさんを庇って、Aさんが背中から壁上に落ちたんです」
「大丈夫。昔から身体は丈夫だから」
ホッと息をつく。
丈夫なのは嘘じゃない。
なんだったら他人よりも怪我の回復も早い方だ。
Aは立ち上がると、埃だらけのジャケットを脱ぎながら、モブリットに状況を聞く。
自分が気を失っている間に、エレンが超大型巨人達に連れ攫われたらしい。
そしてその奪還の為にエルヴィンが調査兵と憲兵を連れてここまで壁の上を走ってきた。
今はハンジによるエレン奪還作戦をエルヴィンと話している、と。
Aはツカツカとそちらに向かうと作戦会議に加わった。
話が終わって、エレン奪還に向かう事になると、ハンジがAを呼ぶ。
そこに行くと、ハンジの隣には膝をついて彼女と目線をあわせているエルヴィンがいた。
「私は全身打撲で馬に乗ることも出来ないんだ。でも、あなたも動けるなら奪還に向かってほしい。戦力は多い方がいい。ここが正念場だ。私はここでちゃんと待っているから…エルヴィンを宜しくね」
「分かってる。そう言うと思ってた。エレンは大事だわ」
あれから会っていないエルヴィンが心配そうにこちらを見るが、Aは目も合わせない。
頼もしく頷いたAは、ハンジに微笑んだ。
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時