第62話 ページ15
「なんで名前を偽ってるんだ」
リヴァイの問いはもっともだ。
Aは特に迷った風もなく答える。
「偽ってはいない。両親が亡くなった後に引き取られたのはクロフト家だもの」
「私の父の姓が、アッカーマンなの。でも父はその名前のせいで迫害にあっていたらしくて、母との結婚を期に引っ越してからは母の姓を名乗ってた。だから母が、父にこのネックレスを贈ったと聞いてるわ。名前を大事にして欲しい、と」
少し辛そうに話すものかと思いきや、Aの顔はいつも通りだった。
リヴァイはいつしかハンジに聞いたことを思い出す。
ーあの子の過去が知りたいなら直接聞いたら?割と普通に教えてくれるよ?ー
あの言葉は本当だったようだ。
そしてそこでリヴァイはある事に気づく。
「そういえば、エレンの野郎の友人にアッカーマンってのがいたな」
「ミカサね。…よくそんな事覚えてるわね」
「珍しい名前だからな。あまり聞いたことがねえ」
「私も両親が亡くなった後、アッカーマンを名乗ろうと思っていたんだけど、クロフト家の両親に止められた」
「ならなんでミカサはアッカーマンを名乗ってる?お前が思うに、良くない名前なんだろ?」
Aは顎に手を当てて何かを考える仕草をした。
「多分、彼女の出身が壁の一番外の小さい町だったからじゃないかと思ってる。実は、父は元々王都に住んでいたみたいなの。更にクロフト家の父は王都に出入りする機会が多い仕事…医者で。つまり王都ではアッカーマン姓が疎まれているんじゃないかと予想してるわ」
「お前が調べたのか?」
「そう」
「しかしどうしてそこまでその名前にこだわる?実際に名乗った事はねえのに」
「あの頃は子供だったから、止められると余計にそうしたくなったんだと思う」
Aはとても大事そうにネックレスを撫でた。
「今は、自分のルーツが知りたいだけ。クロフト家の父には感謝してるし、本当の父親だと思ってる。だからこそ、どうしてそこまでして止めたのかが凄く気になって」
「ただの好奇心」
そう言ってネックレスを首につけた。
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時