もう1人のアッカーマンー中編ー (ページ12)

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第60話　あなた視点ページ12

ハンジの巨人談義が始まるとそれこそ朝までコースなので、面々はエレンだけを置いてダイニングから出て行く。
呆気にとられた様子でこちらを見るエレンに構わずドアを閉めると、全員顔を見合わせてホッと息をついた。

「今回の生贄はエレンでしたね」
「まあ、エレンはハンジの巨人講義、初めてだからまだ持つんじゃない？さ、寝ようか。明日も早いんだから」

古城の2階から上は、それぞれが自室として使う事になっている。
どこぞのお母さんさながらにAが手を振って、残ったメンバーを自室に向かう為の階段に促す。

全員でゾロゾロと階段を登る。

登った先には長い廊下があって、個室がいくつか並んでいた。

過去にそこに詰めていた兵士達が宿舎にしていた部屋だろう。
事前にリヴァイ班がAやハンジの部屋も掃除してくれていたそうなので、割り当てられた部屋に各々入っていった。

どの部屋も中は小さなデスクと椅子、シングルベッドがあるだけ。
部屋自体はそんなに狭くはないので、妙にガランとして見える。

Aは兵舎から持ってきた荷物を置くと、椅子に座った。
荷物整理してから…とは思ったが、なんだか疲れてやる気が出ない。
なんだか調子が出ないのは絶対エルヴィンのせいだ。

はぁ、とため息をついて肩を軽く揉むと、コン、と小さな音がした。

そちらを見ると、床にAのネックレスが落ちていた。

(また取れた)

緩慢な動きでそれを拾い上げると、なくさない様にハンカチの上にそれを乗せて机の真ん中に置く。
荷物の中から工具セットを取り出すと、それも机に並べた

こうやって工具を出してみたが、実はあまりこういうものの修理は得意ではない。

このネックレスは父親が若い頃に買ったものだから相当古い品だ。
その為、定期的にメンテナンスをしないとネックレスのチェーンが外れてしまう。

今まで無くさずに来られたのは、常にこれに気を配っているからに他ならない。
(私には上手に直せないのよね…)

しばらくネックレスと工具のセットを睨みつけていたAだったが、諦めて立ち上がった。

(とりあえずシャワー、浴びてこよう)

着替えを持ったAは部屋を出て行った。