どろり。 5 【東京卍リベンジャーズ】

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一瞬にして静まる空間。Aは数秒固まった後、慌てた手つきで財布から千円札を数枚テーブルの上に乗せ、鞄を手繰り寄せ走って店を出て行った。



残された乾と九井は、黙って机上に置かれた千円札を見つめていた。




そんな雰囲気の中、やがて口を開いたのは乾だった。


「怒ってたな、A」
「……マジ？」
「少なくとも俺はAのあんな表情初めて見た」


長い長い溜息を吐いた九井は思わず頭を抱えた。
Aを怒らせることが目的なのではない。九井はAの身に危険なことが起きないように、痛い思いをしないで欲しいだけなのだ。

しかし説得方法が不味かったようで結果的にAは黙って二人の元を離れて行ってしまった。
ということは黒龍と東卍の抗争でAとぶつかるのは必然的。九井は再び重たい溜息を吐いたのだった。



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「ッみんな……！」
「え、Aさん！？」


Aが走って辿り着いた先は三ツ谷達の元だった。
大寿との話し合いが終わり、Aを待っていた四人は目に涙を溜めたAの顔を見てぎょっとする。

松野、花垣、八戒が慌てふためいているのを横に三ツ谷はAを優しく抱き止めた。

「どした？何があった？」

と、酷く優しい声色でそう尋ねる三ツ谷の胸元でAはそっと瞳を閉じた。



「……わかんない。でも、Aの友達が減っちゃったかも」



か細い声でそう言うAの瞳からぽろぽろと溢れ出る涙を人差し指で丁寧に拭う三ツ谷の顔はなんとも形容し難い表情で、近くで見ていた松野は思わず肩を強ばらせた。纏う雰囲気が何だかとても重たく、怖い。


「……そういえば、タカちゃん達はどうなったの？」

潤んだ目で三ツ谷を見つめるAに、四人は一気に押し黙る。どう説明しようかそれぞれ思考しているようだ。





「…………実は」

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