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「っA!」
「え、イヌピー?」
5人がエントランスに入ろうとした際、後ろから息を切らした乾がやってきた。次いで九井も乾の後ろにいる。
「テメェ等は先にボスの所に行け。俺らはAに用がある」
「…ハァ?ちょっと待てよ、ンな簡単にハイわかりました、でAさん渡す訳ねェだろ」
乾が三ツ谷たちにそう言えば、コメカミ辺りに青筋を立てながら松野が前に出てくる。心無しかいつもより口調が荒く、一目で怒っているのだとわかる。
乾と松野が睨み合う中、九井は呆れたように溜息を吐き言葉を投げかける。
「此処で無駄な争い事起こしていいのかよ?ま、時間過ぎてボスと話できなくなってもこっちは痛くも何ともねーけど」
「…そうだね。千冬くん、大丈夫だから先に行ってて?」
「っでも、Aさん!!」
「折角大寿くんを説得できる機会なんだから。ね?」
Aはそっと手を握り松野にそう言った。Aの手からじんわりと伝わる温度に松野は心臓が勢いよく脈打ったが、気づかれないよう大きく首を縦に振った。
そんな松野の隣で、花垣はあからさまな反応の松野を横目で見ていた。チラリと三ツ谷の反応を伺ったが此方はやはりポーカーフェイスが上手い。
が、目線だけはAに握られた手を冷たく射抜いている。
そんなことはつゆ知らず。
Aはぱっと手を離し、三ツ谷の方へと振り返る。Aが自身の方へ向いた瞬間三ツ谷の目つきが柔らかく変わったのを花垣は見逃さなかった。
「タカちゃん、任せた!」
「ん、任された」
ぱちん、と2人がハイタッチを交わす。笑みを浮かべたAを見て、三ツ谷はAの頭を数回撫でた後、花垣、八戒、千冬に中に入るよう指示を出した。
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「…よし。どうしよっか?」
「俺たちに着いてきてくれ」
「はーい」
余りにも素直な態度のAに九井は頭を抱える。何故敵同士だと判明した今なお自分たちの指示に従うのかわからない。
「ヤ、Aさあ…そうやって知らねェヤツにほいほい着いてくなよ。普通に危ねェ」
「それくらいわかってるよー!ていうかココくんたち知らない人じゃないし!…それに、2人はAに酷いことしないって信じてるから」
真っ直ぐ「信じてる」と言われ、九井は心の柔らかい部分を優しく撫でられた気分になった。Aの言葉はいつも脆い部分を修復してくれるような気になる。そう思える程Aは九井の奥深くまで巣食っていた。
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飛鳥 - 続き楽しみに待ってます! (3月14日 7時) (レス) @page36 id: 2cfd6d6f99 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - めっちゃ好きです!!!続き待ってます!気が向いたら更新してください!応援してます! (12月29日 17時) (レス) @page36 id: cc16e6db3c (このIDを非表示/違反報告)
シア(プロフ) - 続き楽しみにしてます!! (10月28日 20時) (レス) @page35 id: 38b8a932a2 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのみき - 東リベの夢小説史上面白い小説でした!更新頑張ってください! (10月13日 22時) (レス) @page34 id: d976c5d16a (このIDを非表示/違反報告)
名無し68593号(プロフ) - 更新ありがとうございます‼️最高です (10月6日 23時) (レス) id: 38145731e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まる | 作成日時:2021年10月16日 21時