烏の主将に妬きもちの文字は無い。その3 [澤村大地]

そのひゃくじゅうなな。 ページ34

お腹減った。




座っててお尻痛いし。





大地くんが来ないし。








『…あの子のとこ行ったんだろうなぁ。』








約束大事にするもんね。



分かってたし。



…だから来ないだけだし。




なんて言い訳してみても。




無性に悲しくなってきて。




膝を抱えて鼻を啜って。








『…待ってたら来るかな。』








来るだろうな。



大地くんなら来るだろうな。




どうしよう、変な感じだったよね。




別れ話とかと勘違いしてきたらどうする？




うん、それは違うよって言おう。









『…お腹、減った。』


「…走って出て行くからだろ？」


『…どなたですか。』


「顔上げなきゃ分かんないか？」


『…名前を聞かなきゃ分かりません。』








ベンチにしゃがんでる私の前に。




誰かが立ってる。




誰かって一人しか居ないのも分かってるけど。




泣いてるから顔見られたくない。








「澤村大地だけど。」


『…知ってます。』


「何だ、そりゃ。…A。」


『…あの子は？』


「断ったけど…。」


『…どして？』


「Aに呼び出されたから。」









今、大地くんはどんな顔してるんだろう。





怒ってるかな。





いや、呆れてるよね。





今になって自分でも呆れるからさ。









「なぁ。」


『…何？』


「何って言うか…何？」


『…聞き返すんですか。』


「呼んだのお前だろ？」


『そうですけど…。』


「…A？」








お父さんみたい。





私の前にかかんでるのかな。





声が近い。





さっきよりも。









「顔、見せて。」


『やだ。』


「A。」


『それは難しい。』


「どうして。」


『大地くんが…。』


「俺が？」


『…何もない。』








駄目だなぁ。





顔上げなきゃ。





って思ってたら。





頬が挟まれて。






大地くんが見えて。









「…来たぞ、まんぼう。」


『…まんぼうじゃないし。』


「そっくりだけどな。」









何だ。




笑ってる。





大地くんも来てくれたんだ。






私が頑張らないでどうするよ。

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