烏の主将に妬きもちの文字は無い。その3 [澤村大地]

そのひゃくじゅうろく。T ページ33

いつものように3年の教室に行けば。



Aさんの代わりに居るキャプテン。




何か真剣な顔で弁当も食べないで。







「…なぁ。」


「何ですか？」


「俺、何か悪い事したか。」


「佐々木に？」


「あぁ。」


「さぁ。知りません。」


「してないと思いますけど…。」


「だ、大地、行かなくて良いの？佐々木のとこ。」


「…でも約束が。」


「佐々木、真剣だったぞ？」








何か良く分かんないけど。




Aさんが出ていったことと。




キャプテンが悩んでるのは確かで。





…何、この状況。帰りたい。








「それで良いのかよ、大地。」


「でも…」


「でもとか、だけどとか、さっきから何悩んでんだよ！」


「す…菅原さん？落ち着いて…」


「山口、良いじゃん。話させといたら。」


「でも、ツッキー…。」


「一年との約束と佐々木、どっちが大事なんだよ！」


「…それは勿論、Aだけど。」


「じゃあ行って来い！」









うちでキャプテンを叱れるのは菅原さんだけで。




今、目の前でそんな事になってて。




…ドラマみたい、と呑気に思う。







「…分かった。じゃあ、あいつが来たら…」


「し、失礼します！澤村先輩いらっしゃいますか？」


「…来たし。」


「大地、行って来い。」


「あ、何か、頑張ってください…。」


「あぁ。」








やたら熱かった菅原さんがはぁー、と気の抜けるため息ついて。




悪かったな、って。




僕らに謝る。








「何があったんですか。」


「佐々木があの子と大地のこと聞くって呼び出してさ。」


「めんどくさ。」


「ツッキー、辛口だね！」


「でもさ、佐々木は真剣なんだよ。」


「教えてあげなかったんですか、あの子のこと。」


「いや、二人に口止めされてたから。」


「菅原さんも案外Ｓなとこあるんですね。」


「だよね、ツッキー！」


「えぇ？そういうつもりじゃ…。」








キャプテンを妬かせたい。




って言ってたわりに。




妬いたのAさんだし。





あの子の事何も知らないのに直感的に動き過ぎだし。








「大地、断ったな、あの子。」


「みたいですね。」


「1年…5組だったっけ？」


「そうです。進学クラスの谷地仁花、体育委員です。」


「…勘違いし過ぎ、Aさん。」









断られた女子が帰ってくのを見ながら。




Aさんの単細胞さに呆れて。





あの子が第二体育館に来るのはまだ先の話。

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