烏の主将に妬きもちの文字は無い。その3 [澤村大地]

そのひゃくじゅうよん。 ページ31

教室に入ってきた大地くんは。




毎朝変わらない感じで。





おはよー、って挨拶すると。





英単語の本を開いて。








『…菅くん。』


「何？」


『…昼休憩、私、行くからね。』


「でも、大地あの一年と…」


『…選んでもらう。』


「え。」


『そうじゃないと分かんないじゃん。』


「…分かり切ってるんだけど。」


『笑止！…このままでは私が妬きもちの塊になる。』


「安心して、もうなってる。」


『…月島先生も山口くんも頑張ってくれたもん。私も頑張る。』


「ベクトル間違えてる気も…」









なかなか煮え切らない菅くんを睨むと。





怖くない、って一蹴され。





落ち着けよ、まんぼうなんて言う。









『…私、臑を蹴るのは得意なんだから。』


「その特技なに。…いいから落ち着けよ。大地は約束とか大事にすんだぞ。知ってるだろ？」


『知ってる。』


「だから佐々木が選ばれる確率なんて…」


『0かもしんない。』


「なら…」


『でも0か100かの確率とか何かかっこいいし。』


「日向じゃないんだから。」


『…やってみたいし。ね、いいでしょ？』


「…別に俺は良いけど、佐々木が傷つくとかやだよ。」


『まだ分かんないのに傷つく予定やめて。』


「月島達に言わなくていいのか？」








凄く不安そうな顔の菅くん。





そんなに可能性の無いように見えてるのか？





それって大丈夫かな…。









『でもやる！先生達には事後報告。』


「怒られても知らないべ。」


『…それはそれで何とかする。』


「…はぁ。」


『な、ため息つかなくても…。』


「佐々木は止めても聞かなそうだもんな。…仕方ないから手伝うよ。」


『ほんと！？』


「うん。」









任せてよ、って私の頭をぐしゃぐしゃ撫でる菅くん。




優しいなぁ、素敵だ。




でも髪がぐしゃぐしゃになっちゃったよ。









「じゃあ、昼に…」


「昼にどうしたんだ？」


『大地くん！』


「何だ、くしゃくしゃじゃないか。…ほら。」


「昼に…いや、あれ、何かもう腹減ったなぁって！」


「早いな。朝、ちゃんと食べてるのか？」








いつの間にか側に来た大地くんが。





手櫛で髪を直してくれる。





嬉し…ってそうじゃなかった！






この人に聞かなきゃいけないことが沢山あるんだから。

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