烏の主将に妬きもちの文字は無い。その3 [澤村大地]

そのひゃくいち。　T ページ18

ごろごろ保健室の扉が開いて。





あの低い声が響いて。





Aさんの顔が馬鹿みたいに嬉しそうで。






…分かりやすい。









「大丈夫か？」


『このとーり！大丈夫。』


「月島も悪かったな。付き添い。」


「別に。時間あったんで。」


「消毒したのか？」


『先生にしてもらったよ。』


「そっか。」


『てか、大地くん、部活は？試合は？』


「大丈夫。セット交代だから。今は成田が入ってる。」


『そっか。』









妬いたのか？





妬いたんだろうな。






もしかしたらまた失敗して菅原さんに行けって言われたのかも。






その可能性、なきにしもあらず。









「キャプテン。」


「何だ？」


「僕、戻りますね。」


「そうか？」


「はい。爪の怪我に二人も付き添い要らないでしょ。Aさん、園児じゃないんだし。多分。」


『確実に園児じゃないよ！』


「じゃ、そーゆー事なんで。」


『あ、月島くん、ありがとね。』


「別に。」









妬けばいいのに。





妬きました、って。





僕がAさんと保健室行くから気になりました、って言えば良いのに。





何で思わせぶりなことばっかすんだ、キャプテンは。









「…むかつく。」


「あ、ツッキー！」


「何、山口。」


「次、ツッキーの番だから、呼びにきた！」


「あっそ。」


「…ツッキー、何か怒ってる？」


「黙れ、山口。」


「あ…ごめん、ツッキー。」









怒るでしょ。





鈍過ぎだし。





東京のプリンさんは変な事言ってくるし。





早くキャプテンが妬いて終われば良いのに。









「ツッキーとAさんが出て行ったあと、キャプテンぼろぼろでさ。菅原さんに行って来いって言われてたよ。」


「ふーん。」


「あの二人、お似合いだよね！」


「まぁね。」









想像と合い過ぎて気持ち悪い、何それ。





ていうか、鈍いのはキャプテンだけじゃないし。





あの人が妬いてるの気付いてないAさんもAさん。









「山口。」


「何、ツッキー？」


「キャプテンに会いにきてる女子、調べる。」


「何で？」


「良いから。出来る？」


「任せて、ツッキー！」









日曜日がいい。






合宿でも掛けた王手。






そろそろ気付いてもらって良いですか、キャプテン。

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