36 ページ36
マルコside
船に残っていたナースに頼み凜の傷の処置と身体を綺麗にしてもらう。
処置が終わったと報告を受けた俺はベッドに横たわっていた凜の手を握りそっと声を掛けた。
「怖い思いさせちまってすまなかったねぃ。・・・・でも、こうしてまた会えて本当に嬉しいよぃ」
そう言ってそっと頬を撫でると少しだけだが凜が微笑んだ気がした。
「これからはもう二度と凜を傷つけさせないよぃ。だから、俺の隣に居てくれぃ」
サンサンと煌く朝日を瞼に感じ私はゆっくりと意識を浮上させた。
ぱちと目を開くと見知らぬ天井が目に入る。
ゆっくりと手を動かそうとした所で右手に温もりを感じそっとそちらに目をやった。
「・・・・・ま・・・マルコ？」
そこにはあちらの世界に居た時とは違うDVDで何度も観た彼が居た。
「夢じゃなかった・・・・」
そう一人呟くとまた瞳からハラハラと涙が零れ落ちる。
昨日から泣いてばかりの気がするが溢れる気持ちを止める事は出来なかった。
「ん・・・凜？起きたのかよぃ？」
マルコはそう言って起き上がるとゆっくりと私の頭を撫でる。
「ふふ。うん、なんだか不思議な気分・・・・」
「だろうねぃ。俺もだよぃ・・・また、泣いてたのかよぃ？」
マルコは優しくそう言うと私の頬に伝う涙をそっと指で掬った。
切なげなその表情に一気に顔に熱が集まるのを感じる。
マルコが何かを言いかけた次の瞬間だった。
バタンと勢いよく扉が開かれ大きな声が聞こえた。
「マルコ！！！お前が女を連れ込んだって噂で船が持ちきりになってんぞ！！」
瞬間ピクリとマルコの額に青筋が浮かんだ。
「サッチ・・・・・おめぇ、ちょっと位空気読めよぃ！！！」
マルコはそう言うとサッチさんのコック服の胸倉を掴み上げる。
「おいおいおい、マジかよ！！！！」
そんな事気にする様子もなくサッチさんは私の方をクルリと向くと笑顔で言った。
「俺はサッチ、この船でコックやってるんだ」
初めて直接見るサッチさんに私は両手で口を押えまじまじと見つめた。
「おいおい、照れるぜぇ〜、こんな可愛こちゃんに見つめられるなんて・・・」
そう言ってまんざらでもない様子の彼にマルコの表情は益々険しくなる。
このままではマズいと思い私はゆっくりとベッドから降りるとサッチさんの前に立ち深々と頭を下げた。
「初めまして、凜と言います。この度はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗良咲(プロフ) - 猫さん» ありがとうございます。返信遅くなってすみません。とても励みになります！！これからもよろしくお願いします。 (2021年10月8日 23時) (
レス) id: 90730fcb24 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - この作品好きです!更新これからも頑張ってください!楽しみに待ってます! (2021年10月4日 20時) (レス) id: f024874d73 (このIDを非表示/違反報告)
紗良咲(プロフ) - ミィさん» ミィさん わぁぁぁ、本当にそう言って頂けて嬉しいです。頑張りますのでよろしくお願いします。 (2021年5月23日 22時) (レス) id: 90730fcb24 (このIDを非表示/違反報告)
ミィ(プロフ) - とても面白いです！更新楽しみに待っています！頑張って下さい！ (2021年5月20日 0時) (レス) id: 9ab59aac0a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紗良咲 | 作成日時：2021年5月8日 16時
