ガラスの人形（緑）

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俺は本心はどうであっても
時折、発作的に
何かの振りをしてみたくなることがあった。


その演技が自分にとって
意味のないものであったとしても
何かに駆られるように俺はよくそれを始めた。





これは俺の以前からの癖というか
病気のようなものだった。


せやから、
刃物で手を傷つけられても
俺は心優しきヒーローという役やから
君を見捨てたりはしない。







丸「A〜」







顔に笑顔を貼り付けて
足取り軽やかにAのことを探していると

公園の前に立っている小柄な男性が視界に映った。




アイツは確か







丸「渋谷さん」







なに、してるんやろ。

こんな夜中に。






渋「今は、何を演じてるん？」






嫌なモノでも見るように
眉を寄せて俺に視線を向ける。






丸「えーっと、何を言うてはるん？」

渋「A、帰ったから」

丸「・・・は？」

渋「お前もはよ帰れ」







Aの帰る場所といったら
大倉の家なんやろな。

Aの家は、燃やしたし。







丸「それは残念やわぁ・・・」






意図的に表情筋を動かし
しょんぼりした顔を作る。

そんな俺の顔を見て
眉間にシワを寄せたままの渋谷さんは
黙ってその場を後にした。






丸「も〜、寂しいやんなぁ」






夜闇の中
一人ぼっちで呟く自分の姿が滑稽で
思わずケラケラと笑った。

が、すぐに真顔に戻し
俺も家に帰ることにした。

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