夜想曲第2番変ホ長調（赤）2章

記憶 ページ10

渋谷side









土曜日。



今日は休日やけど、



PTAの委員会に教師である俺も



参加せなアカンから学校へ登校する。








教師っちゅう職業は休日でも



仕事がある時があるから大変や。








せやけど、生徒の成長を見守れる



素晴らしい局面もあるんやけどな。








委員会が始まるよりも



めっちゃ早めに学校に着いた。



とりあえず、楽譜や



授業で使う音楽鑑賞のDVDを



整理しよっかなと思い音楽室へと向かう。








ガチャリと音楽室の鍵を開け中に入ると



まず、ピアノが視界に映る。









渋谷「…あ、楽譜」









漆黒のピアノのためか純白の楽譜が目立つ。



ピアノの譜面台に楽譜を置きっぱなしに



していたんだと思い出す。








スタスタとピアノの方へと向かい



楽譜を片付ける。









渋谷「…何や？」









最後のページを手に取ったら



下の方の余白に



何かメッセージが書いてあった。









“渋谷先生が演奏するこの曲が好きです”









この曲って



『夜想曲第2番変ホ長調』の事か？








この曲は、ピアノの詩人と称された



ショパンが恋人のために作曲した



愛の曲やねん。








―この曲が好きです―



この言い方は、以前に



俺の演奏を聞いた事があるんかな。








でも、ホンマに好きな人にしか



演奏せえへんって決めとるから



まだ、誰か一人だけの為に



演奏した事は無いはずなんやけど…








よう分からへんけど



この字を見てると



どこか懐かしくて優しい気持ちになれる。









渋谷「誰なんやろ？」









名前の書かれていない



匿名のメッセージを



指でそっとなぞった。

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