夜想曲第2番変ホ長調（赤）2章

将来の夢 ページ15

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「横山先生、おはようございます」









偶然、前を歩いていた横山先生に



後ろから声を掛ける。








振り向いた姿は相変わらず



白い肌に黒色のスーツが似合っていて



少しだけ羨ましいと感じた。









横山「はよ」



「今日は、三者面談のプリントの提出期限日ですから忘れずに生徒へ伝えて下さいね」



横山「……知っとるわ」









妙な間が怪しい。



高校を卒業して大学へ行き



教師になって三年が過ぎようとしていた。








高校は数多くあるのに



横山先生とは何故か職場が同じで



毎朝、顔を見合わせる。



そのため、



何だかまだ高校生のような錯覚がする。








_______________ガラガラ









「はい、朝のHRを始めるので席に着いて」









教卓の両端に手を置き



生徒を見渡す。








私が担任を務めるこのクラスは



明るい雰囲気が特徴だ。









「今日は、皆さんに報告があります」









左手の薬指にキラリと輝く指輪。



そう、報告とは、









「実は、先生結婚しました」









先週、行われた結婚式の報告だ。









『うそー！』



『おめでとう！』









言い終わった途端に



ブワッと歓声が溢れる。









『職業は？』



「高校の音楽の先生です」



『同い年？』



「私より年上」









さっきからずっと質問攻めに合う。









『名前は？』









そんなの聞いても分からないでしょ。



はたして意味があるのかなと思ったが



目をキラキラさせている生徒が可愛いから



仕方なく教えてあげる。









「渋谷すばるさん」









確かに、将来の夢とか進路なんて難しくて



目を逸らしたくなる。








でも、悩んで必死で藻掻いた過去があって



今こうして充実した毎日を過ごしている。








この職業を選択して良かったなと



目の前の生徒を見渡しながら



心の底からそう思った。








　









―END―

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