30センチの距離 (ページ2)

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８月。
朝だというのに外は暑く、
早く涼みたい、という気持ちが
足早にさせる。

オフィスの扉を開けると
冷房の冷たい空気が一気に押し寄せ
熱った体を冷やしてくれた。

この時間だからまだ誰も来ていない、
そう思っていたのに誰がいるんだろう。

ふと辺りを見渡すと、執務室の扉が
少しだけ開いていて犯人がわかった。

そっと扉を開けると、静かに眠る姿があった。

「…ん、あぁもう朝か…おはよ、A 」

私の気配に気がついたのか、彼は目を覚ました。

彼、というのは私が勤めている会社
quizKnockのCEOを勤める
伊沢拓司。

拓司くんと私は大学の同級生で、
一年生の頃に同じ授業を選択していたのを
きっかけに仲良くなった。

そして、大学四年のとき
拓司くんが、知識を世の中に発信したい、と
ウェブメディアを立ち上げることになり、
一緒にやらないか、と誘われたのを
きっかけにこうして今も一緒に仕事を
している。

最近はテレビにも引っ張りだこだから
忙しくてつかれてるんだろうな。

「またオフィスに泊まってたの？
ちゃんと休まないと…」

心配して声をかけると、
ふわりと微笑んで

「大丈夫だって！
昨日はたまたまオフィスの近くで飲んでて、
終電逃したから泊まってただけ。」

と、答えた。

机の上の大量の資料をみて、
私を心配させないための嘘なのはすぐに
気がついたが触れないことにした。