９２ ページ45
花火が始まる時間が近くなると、ゾロゾロとお客さんたちが移動し出すのを見て、花火大会あるんだ、とさらに胸が高鳴る。
１階が居酒屋のビルの外階段を、３階の屋上まで上がるとちょうど他のビルのすき間から花火が見える。
屋上はお世辞にも綺麗とは言えなくて、コンクリートの地面に錆びた鉄柵のある簡素な作りだけど、景色は絶景だった。
大学時代先輩と付き合っていた時に２回見たことがあったけど、社会人になってからは初めてだったりする。
先に行ってて、と潤くんに言われて屋上に上がった頃には、さっきまでお店で一緒に飲んでいたお客さんたちで溢れてた。
階段からすぐの場所でお客さんの中に紛れながら、見えるかな、なんて首を伸ばしていると、カン、カンと音を立てながら潤くんが鉄階段を上ってくる。
「A」
「潤くん、こっち」
「人多いな」
「もっと早く上がればよかったね」
「だね。はい、ビール。ノンアルだけど」
「ふふ、ありがと」
ビール飲みながら花火だなんて風情だね、なんて話していると、まもなく一発目の花火が打ち上がる音がする。
花火が上がる真正面を見つめながら少しだけビルに隠れる花火に、あ、なんか角度惜しいな、なんて思いながら、そっと首を伸ばす。
ふいに隣りにいた潤くんに、こっち来なよ、って手を引かれて、気づけば潤くんの胸に背中を預けている状態だった。
視線をあげて振り返れば整った顔がすぐそばにあるし、ビールを持った反対の手が腰に回されていて、他の人に見られてたら恥ずかしいな、なんて思う。
だけど花火を見るために集まった人たちが私たちを見てるハズもなく、視線はみんなビルの向こうに向かっていた。
体中じんわりと熱くなってくるのを感じながら、私も儚い光に携帯のカメラを向けた。
真夏の花火大会に比べると小規模だし時間もあっという間だったけど、今年一発目としてはちょうどいい刺激に酔いしれる。
少しずつお店に戻っていく他のお客さんの流れに沿って一緒に階段に向かおうとしたところで、潤くんに腕を掴まれた。
「ね、せっかくだしもうちょっとここで飲んで行こうよ」
「え、」
「今日バタバタしてたし店ん中賑わってるし、Aとゆっくり話したい」
綺麗な瞳に見つめられたら、愛しい声にそう言われたら、断れる訳もなく素直に頷いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 944人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なつめ(プロフ) - 真由美さん» はじめまして＊お返事が遅くなりましてすみません。お話を気に入っていただいてたなんて、とてもうれしいです＊続編、番外編、書けたら書いてみたいです！お約束はできないのですが、少しずついろんなお話を書いていきたいと思ってます＊ (2016年11月15日 1時) (
レス) id: d97a9250d2 (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - みやこさん» はじめまして＊お返事が遅くなりましてすみません。お話を楽しみにしていただいてありがとうございました＊優しい潤くんに甘やかされるだけでとろけちゃいそうですよね（笑）次回もがんばります＊ありがとうございました！ (2016年11月15日 1時) (レス) id: d97a9250d2 (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - 美紀さん» こんばんは、お返事遅くなりましてすみません。おかげさまでようやく最終話を迎えました＊潤くんのお話も翔さんのお話もたくさん読んでいただいてありがとうございました！とても幸せです＊ (2016年11月15日 1時) (レス) id: d97a9250d2 (このIDを非表示/違反報告)
真由美(プロフ) - はじめまして。毎回キュンキュンしながら読ませていただいていのでもう終わりだと思うと寂しいです。潤くんの小説他より少ない気がしていたため気に入った小説に出会え嬉しかったです。もしよろしければ続編、番外編をお願いしたいです。次回作も楽しみにしています。 (2016年11月9日 20時) (レス) id: b6bccf650d (このIDを非表示/違反報告)
みやこ(プロフ) - 初めまして！毎週更新されるのを楽しみにしてました。気持ちを隠さなくなった潤くんの甘さにキュンキュンしながら、もう終わりなんだなぁって寂しくなってました。長い間お疲れ様でした。次回作も楽しみにしています！ (2016年11月6日 23時) (レス) id: ec4065a8bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なつめ
| 作成日時：2016年6月4日 21時
