【歌い手】また明日、泣きに来よう (ページ15)

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「まふくーん、いるー？」

まふくんの家の玄関を開け、声をかける。

「いるよ……っ」

掠れ気味の声が返ってくる。

「ただいま、ごめんね？」

リビングの扉を開けるとソファーに座っていた。

「おかえりなさい……」

隣に座り頭を撫でる。
まふくんは気持ち良さそうに目を細めた。

「A、」

「ん？どうしたの？」

「ごめんなさいっ！」

「えっ」

真剣な声で呼んだと思ったら勢いよく頭を下げた。

「Aがいるのに、胡桃さんを彼女って言って……、裏切って、ごめんなさい……！」

「言いたいことは分かったんだけれどごめん、胡桃さんって誰……」

「あの、女の人……」

「あ、あの人か」

あの悪魔みたいな人、胡桃さんって言うのか……
ぎゅって袖を掴んで謝り続けるまふくん。
わたし、どんだけ謝られているんだ……

「まふくんは、私を守ろうとしてくれた。そうでしょ？なら、謝らないでいいよ」

「っ、うん……！A、ありがとう……っ」

ふわりと花のような笑みを浮かべるまふくん。
母性本能が働く子だなって思うよ。

「っあ……あのねっ、渡したいものがあるのっ」

ニコニコとしながら立ち上がり引き出しへと向かう。

「はいっ、これっ！Aにプレゼント！」

開けてみて、可愛らしい笑顔を浮かべるから頬が緩み、高速で開ける。
常々、彼には甘いものだ。

「……！まふくん、これ……！」

そこに入っていたのはトパーズのついたネックレス。

「えへへっ、Aが喜ぶかなーって！」

「喜ぶよ、喜ぶ……っ！」

私はオレンジ色の宝石、特にトパーズが好き。
貰ったネックレスはシンプルでいて綺麗なデザイン。
この前、買い物に出かけた時に気に入ったネックレスだった。
ただでさえ嬉しい中、まふくんがくれたプレゼントだから喜ぶ以外の選択肢は私にない。

「ありがと……、まふくん……っ！」

ネックレスを抱きしめてまふくんにお礼を言う。

「いいえっ、Aが喜んでくれて僕も嬉しいよ！」

やっと、合点が一致した。
この前、莉音とまふくんが一緒にいたのはこれを買うためだ。

やっぱり、まふくんは私の大好きな彼氏だ。