【歌い手】また明日、泣きに来よう (ページ2)

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あれから数日後、雨に濡れて帰った為風邪気味になった。
倦怠感に見舞われたので仕方なくショッピングは諦めて、食材を買うだけにした。
マスクをつけて顔バレ防止のために普段はつけているメガネも取って家を出た。

「あれ、A？」

買い物の帰路、よく聞く落ち着いた声で呼ばれた。

「あ、そらるさん。こんにちは」

彼と仲良くしていたそらるさんがいた。
そらるさんも買い物途中なのかマスクをつけていた。

「Aって今日デートじゃなかったっけ？」

最も聞かれたくなかったことを言われて心臓が跳ねる。どうしよう、なんて答えよう。
早く探さないとそらるさんに怪しまれてしまう。
頭をフル回転させてやっと答えが出てきた。

「……風邪気味だから、今度にしてもらったんです」

誤魔化すために愛想笑いをして、立ち去ろうとした。

「待って」

腕を引かれた。
カーディガン越しでも伝わる少しひんやりしたそらるさんの手。

「……なんですか？」

「嘘つくなよ」

「……やだなぁ、嘘なんかついてないですよ」

「ほら、その癖。あいつも、Aも嘘をつく時は必ず手を組むんだ。今だって、さっきだって」

そう言われて無意識に手を組んでいたことが分かった。
慌てて離すも隠し通せないようだ。

「話して。なにがあったかを」

真剣な眼差しは私の心に深く響いた。
こくりと頷いて近場のカフェにそらるさんと向かった。