まる、さんかく、しかく。-SJ-4

よし、行こう ページ43

事務所への挨拶周りを終え、スタッフ達からは随分と引きとめられ。


急な別れに、やはりユンジさんとの出来事が、と噂をする人もいれば、
私を庇ってくれたスタイリストのオンニを筆頭に辞めないで、と言ってくれる人もたくさんいて。


この半年で、本当にたくさんの出会いがあったのだと改めて実感する。


きっと、日本に帰っても。
これからたくさんの出会いがあり、別れもあって。

そう思うと、悲観的だった気持ちが少しずつ晴れていく。


スタイリストのオンニに、三通の手紙を託して、事務所を後にして。

最後に携帯ショップへと足を運んで、携帯電話の解約手続きをした。


これで、本当に彼らと繋がっていた線が途切れる。

なんだかひどく胸が苦しいけれど、きっとこの痛みは今だけだから。


胸の痛みが癒えるまで、きっとものすごく時間がかかるだろう。

彼らのいない毎日を過ごして、しばらく泣く日もたくさんあって。

それでも、私は一日一日、前に向かって進んでいく。


空港へと向かうバスに揺られながら、私は彼らのいない日々を送ることへの決意を改めて固めた。


バスはいつもよりもあっという間に空港に到着し。

本当に、お別れなんだとじわじわと実感する。


搭乗手続きにはまだ少し時間が早いため、なんとなく空港の近くをぶらぶらと散歩する。


決意が変わらないうちに、手続きをしてしまいたい、と思う自分と、手続きをしてしまったら、後戻りできない、と思ってしまう自分。


もう後戻りなんてとっくに出来ないのに、まだ奇跡を願ってしまう自分は、なんて馬鹿らしいんだろう、と一人自嘲する。


いつまでも、未練がましくしている訳にはいかない。


よし、行こう。


うん、とひとつ大きく頷いて、空港に向かって歩き出す。

最後に、なぜだか頭の中に、大切な人の声が聞こえたような気がした。

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