大切な人を守る術 ページ31
「Aちゃんは、あいつらのことをどう思ってるの?」
私に向けられた優しい眼差しを見て、彼は私の気持ちに気が付いていたんだ、と悟る。
「大切、でした。本当に大事な友達だと、」
涙が浮かんで来るのを手の甲をつねって耐える。
「・・・でも、もう友達じゃいられない」
小さく小さく呟かれた私の本音を聞いて、イトゥクさんはあぁ、そっか、と何やら合点がいったように頷いた。
「気持ち、知っちゃったんだね」
思わずハッと顔を上げると、彼はまた、やっぱり嘘がつけない、と静かに笑った。
「気持ちに、応えられない?」
そう話す彼の声は、どこまでも穏やかで、緩やかで。
「・・・私は、二人にはふさわしくありません」
それは、恋人として、という意味だけでなく、きっと友達としても。
思い返すのは、いつかの彼の姿。
元彼の訪問に怯える私を守って、連れ出してくれたのはイトゥクさんで。
あの日、私を守ってくれた彼のように、私は二人を守りたい。
その気持ちは、確かに心に強く存在しているのに。
ー私には、彼らを守る術を何一つ持っていなかった。
スキャンダルをネタに脅された私が、彼らを守るためにとれる行動はたった一つ。
二度とスキャンダルの発信源にならないよう、彼らの元を去ることだけ。
イトゥクさんは、黙り込む私を見て、ひどく悲しそうな視線をこちらに向けた。
「僕達は、仕事柄きっと普通の人よりは"別れ"をたくさん経験してる。実際に今まで、置いて行くことも、置いて行かれることも多かったよ」
理解を促されるかのように、ゆっくりと、静かに紡がれる言葉達。
「でも、だからと言って置いて行かれることに慣れている訳じゃない」
別れを言えないまま、置いて行かれるのは悲しいよ。
そう話す彼の顔が、みるみるうちにぼやけていく。
「せめて、別れの理由くらいは、あいつらも。そして僕達も、知る権利があると思うけど?」
できることならお別れはしたくないけどね、と笑うイトゥクさん。
だって、仕方ないじゃない。
私には、この選択しか残っていなかった。
「どうしてそんなに優しいんですか、」
考えるよりも先に言葉が零れ、それと同時に涙が溢れる。
「Aちゃんが優しいからだよ」
いつも、僕達の為を思って、自分の事を後回しにして。そんなAちゃんだから、何かあるなら守りたい。
彼がそこまで言った所で、私はもう自分の嗚咽で彼の声が聞こえなくなってしまった。
837人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ななか - 突然すみません!最近読ませていただいてます!ついつい読見入っててしまいます!続きがとても気になります!更新楽しみにしてます! (2014年11月14日 10時) (レス) id: e31223459f (このIDを非表示/違反報告)
k(プロフ) - 更新ありがとうございます!!楽しみにしてます! (2014年10月25日 13時) (レス) id: 2c49601377 (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ - ずっと以前から読み続けています。毎回引き込まれています。更新が楽しみでいつも待っていました。長く続けて欲しい作品です。 (2014年10月25日 11時) (レス) id: ef41c44d6b (このIDを非表示/違反報告)
まんぼー(プロフ) - ウネの切ない感じが、白日夢の曲の感じにピッタリだわ~!と泣きながら読んでましたwが…やっぱりトゥギひょん!男前ですね!それでこそリーダーだわ!みんなが幸せになってくれたらいいなぁ…続きお待ちしてますね (2014年10月25日 2時) (レス) id: 05377478b6 (このIDを非表示/違反報告)
みなチキン(プロフ) - 更新楽しみにしてますpq (2014年10月4日 8時) (レス) id: 335d4b0d2c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:くまこ | 作成日時:2013年8月5日 23時