まる、さんかく、しかく。-SJ-4

遠い世界 ページ15

今日はたくさんのグループが出演するイベントの仕事で。

ステージ袖にいる人は皆忙しそうにめまぐるしく動いている。


「・・・ここ」


袖にあるモニターの前に来ると、
ヒョクはようやく私の腕を離し、そしてまっすぐにこちらに視線を向けた。


「ここで見てて。絶対、動かないで」


命令する口調なのに、どこか懇願するような響きを持ったヒョクの言い方。


「・・・なんで、」


まだ抵抗を見せる私に、
ヒョクはいいから、と一つ念を押して、
ステージに出る準備をするために立ち去ってしまった。


今まで、彼らのステージを生で見ることを頑なに拒んでいた私に対して、ヒョクが強要することなんてなかったのに。


昨日の出来事に一言だって触れなかったことと、
そして、今起こっていること。


二つの違和感がいつまでも頭をぐるぐると駆け巡って、私の心は落ち着きなくざわめいていた。



テレビでは見たことはあったけれど、
初めて生で見る彼らのステージは、圧巻、としか言いようがなかった。


つい先程まで話をしていた人達が、
ステージではキラキラと輝いてその存在感を示し、
いつものあの親しみやすさなんて微塵も感じられなかった。


辛いことも、苦しいことも乗り越えて、
ステージの上ではそんな苦難なんてなかったかのように笑って。


体調が悪くたって、
プライベートで何があったって、
彼らはそれを表に出すことを固く禁じられている。


ーこれが、彼らの仕事なんだ。


モニターを食い入るように見つめながら、
目の前に映っているものが、どこか遠くの世界の出来事のような、そんな現実味のない考えがぼんやりと頭に浮かんだ。

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