誕生日マジック(nbside) ページ5
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m「翔太くん、着いたから起きて?」
「ん、」
ほんとは20分前に起きてたけど。
到着を知らせるアナウンスが聞こえると、鞄の中から慣れない手つきで白杖を取り出して折りたたまれたまま右手に握る隣の彼
そんな彼の反対の手に俺の右手を近づけると
いつものように腕を握ってくれる
m「着いちゃったね 笑」
「ちょっと段差と隙間あるから気をつけて、」
m「ん、ありがとう。これ使ってもいい?」
これ、と差し出したのはもちろん手に握られた白杖
使う度に聞くのかよ、なんて思った反面
俺が少しでも嫌だと感じたらきっと使わないんだと思うと、その言葉に込められた目黒の優しさが分かる
「目黒の好きにしたらいいよ」
m「じゃあちょっとだけ止まってもいい?」
「真ん中の方行くからちょっと待って」
ホームの真ん中で立ち止まって、折りたたんでいた白杖のゴムを外して持ち手を握り直すと
カシャカシャンッ
と音を立ててあっという間に杖になった
「で、どこに向かえばいいの?」
m「乗り換えるんだけどね.......これ、」
いつの間にか白杖を持つ手に握られていた切符
目黒から受け取った切符に記されている目的地は、
「....えっ、箱根?!」
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作者名:まる | 作成日時:2023年3月3日 21時