10 黒side ページ50
とりあえずまた二人で店に戻って、立ちすくんでる彼女を後ろから抱きしめる。
「…ずっと一緒におって。マジやから。」
「ほんとに？私でいいんですか？」
抱きしめる俺の手にそっと手を重ねる彼女。
「他はいらん。…Aがええ。」
いきなり呼び捨てとか調子乗りすぎたか？？
いや、いつも心の中で呼び捨てしとったから、つい…。
「嬉しい…。」
正解だったみたいや。
腕の中でくるっと向きを変えて俺を見つめるA。
どちらともなく唇が近づき…。
甘い空気を切り裂く軽快な着信に思わず二人の間に距離が出来てもうた。
こんな時に誰やねんって思ったけど、心当たりは一個しかないから、彼女も興味津々で俺を見つめる。
「はい。」
深呼吸して通話をタップする。
【ゆうちーん！生まれたよ！母子ともに健康！可愛い女の子やで！！】
きっと泣いてるんやろうって隆平の声につられて俺も思わず泣いてまう。
「そっか、良かったな。しっかり奥さんと子供のサポートしてやれよ。」
俺の姪っこかぁ…。家族増えるってこんな嬉しいんやな。
目の前のAも泣いてもうてるし、めちゃくちゃ可愛いやん。
Aにとっても将来の姪っこやしな！！
「隆平たちの子供が生まれた日と俺たちの付き合い始めた記念日が一緒になるんやな。」
何かくすぐったいけど嬉しくてしゃあないわ。
こんな大事なもんが２つも生まれる夜なんてある？？
この子の成長と同じ分だけ俺とAは同じ時を過ごしていくねん。
今までの人生と何かが大きく変わった気がした夜。
「よし！俺、明日は初めて会社サボるわ！」
「え？どうして？」
きょとんとしとる可愛い子。
「そりゃ今からAを朝まで愛すからやん？」
耳元で囁くと、顔真っ赤にして固まってもうた(笑)
なあ、隆平。
お前が帰ってきたら俺も大事なもん出来たってすぐ報告するから。
そん時はめいっぱい喜んでくれるやろ？
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作者名：葵
| 作成日時：2018年1月21日 17時
