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数日後、横山さんを連れてカフェにやって来た。
閉店近くて、お客さんは誰もいない。
「いらっしゃいませー。」
といつものように出迎えてくれた丸山さんが目を見開く。
と、同時に横山さんも。
そして衝撃的な言葉を丸山さんが発した。
「いらっしゃい。…お兄さん。」
目はまるで生気を失って、口角だけ上げて。
こんな表情の丸山さん、見たことない。
いや！お兄さんって？
名字違うし…どーゆーこと？
「…偶然か？」
横山さんが怒りを堪えるように低い声で聞く。
ふっと目を伏せた丸山さん。
「偶然なわけないやぁん。…全部計算♪」
「アンタと一番近くで仕事しとるから、その子に近付いてん。」
ひどく冷たい目で私を見る。
怖い…！
わからない…何も考えられない…。
「はぁ！？何やと？」
「偶然見てもうてん。あんたらが一緒におるとこ。」
「で、その子に気ぃあるのバレバレな態度やったし。…なら取ってしまおって。」
はははって丸山さんの渇いた笑い声が店内に響く。
え？じゃああのチケット配りも…全部？
最初から計算？
「Aちゃんは関係ないやろ！俺の彼女でもないんやし。巻き込むなや！」
横山さんが丸山さんの胸ぐらを掴む。
「彼女やなくても大事なんやろ？」
「それ奪ったらアンタ苦しむやん？」
熱くなる横山さんといつまでも冷静な丸山さん。
「くそっ！」
横山さんが手を離して丸山さんに背を向けた。
そして、丸山さんが私の方へ向かって声をかける。
「俺とこの人きょーだいやねん。…腹違いの。」
「コイツは正妻の一人息子で俺は愛人の子。」
「金だけはぎょーさん貰ったけど、俺の母親の死に目にも駆けつけてくれへんかったわ…親父は。」
無表情で淡々と話しながら丸山さんの目からは涙がどんどん溢れる。
「５月９日。…母の命日。」
その言葉に横山さんがはっと息を飲んだ。
「俺の誕生日…。」
「そうや。アンタの誕生日やから絶対邪魔したらアカンって…。おふくろは親父の名前呼びながら死んだわ。」
「まぁ、元はと言えば不倫して子供まで作ったおふくろも悪いしな？自業自得やろ。」
「…でもこっちはたまったもんやないわ。」
「なーんでも持っとるアンタの大事なもん一個くらい奪ってもバチ当たらんやろ？」
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作者名：葵
| 作成日時：2018年1月21日 17時
