第二場 ページ3
ウィーンの街道。星の輝く新月の夜。シュタール夫妻が息を切らして登場。
シュタール やはり、イタリアに行ったほうがよかった！ イタリアもファシズムだが、ユダヤ人を虐殺したとは聞いていない……ああ、なんと馬鹿なことをしたものか
レイチェル あまり自分を責めないで、なんとかなるかも知れないじゃない？ さ、行きましょう
シュタール あ、ああ、ありがとう。確かに、モタモタしていたらオットーの家に着くまでに捕まってしまうからね。
二人は走って退場。その後、ツヴァイフェルとドゥムが談笑しながら登場
ツヴァイフェル 上からの情報によれば、ウィーンには結構なユダヤ人がいるらしい。だが、一向に見つからん。まったく、さすがはユダヤ人。ゴキブリのように隠れやがる。
ドゥム 人を殺さぬだけゴキブリの方がいくらかマシですなあ(大きく笑う)
ツヴァイフェル おい、声が大きい。……話を戻すぞ、俺もずっと奴らがうまく隠れてるからだと思っていたのだ。だが昨日だな、ホテルに出入りする親衛隊員を見たのだ。きっと、親衛隊が我々の仕事を奪っているのだろう。ああ、そうに違いない！
ドゥム まさか、親衛隊に仕事を奪われるほど上も馬鹿じゃないでしょう
ツヴァイフェル 親衛隊の連中はお前が思っているよりも数等悪がしこい。このオーストリアでも、非合法なやり方でユダヤ人を捕まえているのだろう。併合直後の混乱をいいことに、好き勝手をする、まさに親衛隊らしいやり口だ。
この時、道の隅々を撫でるような冷風が吹き抜ける。風は止まない。
ドゥム おや、このままでは凍えてしまいますぜ
ツヴァイフェル わかっているわかっている。実は、この近くにオットーという男の家がある。あれはオーストリアのファシストであったが、今は我々と仲良くしている。なに安心し給え、オーストリア人の97%は我々の味方だ。
二人は身震いしながら退場。
オットー邸の前 門を挟んでオットーとシュタール夫妻三人の姿。まだ風は止まない。
オットー まさかウィーンに来るとは思わなかったよ。さあ、すぐに入ってくれ。最近は妙な連中がウロウロしている。
シュタール これは有難い。ひょっとして、断られるのではないかと思って。
オットー まさか。ナチスと懇意にしているのは生き残るため。つまりところ君がベルリンでやったことと同じさ。本心はずっと離れたところにある。
夫妻が門を開けようとすると、横から二つの影が近づく。それはツヴァイフェルとドゥムの二人。
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断章(プロフ) - Sike!さん» ご高覧ありがとうございます。このサイトには戦争物が少なく、需要があるかどうか不安でしたが、そのような感想をいただけて、安心いたしました。重ねて御礼申し上げます。 (2020年3月27日 20時) (
レス) id: e3fb801185 (このIDを非表示/違反報告)
Sike!(プロフ) - コメント失礼します。戦争を題材にした小説は大好きなんです……まさかこのサイトで出会えるとは思ってもみませんでした。登場人物のキャラクターが際立っていて、セリフの苦手な私には羨ましい限りです。お話の続きを楽しみにしております。 (2020年3月27日 6時) (レス) id: b8651e6ca0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：断章 | 作成日時：2020年3月27日 0時
