儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

彼のために 8 ページ28

『…(チッ。)
……え？今の、私…？』


無意識に出た舌打ち…。

モヤモヤした気持ちに戸惑う。



『相変わらずイケてる…』


日に何度もチェックする玲於のインスタ。


それはクラブだったり、

貸し切りらしいレストランだったり…。


パーティーかな？ 楽しそうな、玲於の姿。

メンバーさんや先輩方と笑ってる。



大きな溜め息が零れた。



これも仕事だって分かってる。

そこまでは分かるし、気にしていない。



でも、周りをよく見てみればたくさんの女性。

私のモデル仲間も、綺麗な女優さんも、いる。


…以前、連絡先を玲於の荷物に忍ばせた人も。


私が玲於を好きだから、分かる。

好意の眼差しで彼を見る人が一緒に写ってる。



『…いやだ…』


こんな気持ちになる自分が嫌だ。


普段なら何とも思わないでいられる場面が

曇った私の心に影を落とす。



あの日を後悔してはいない。


玲於の純粋な愛情を感じて本当に嬉しかった。



だけどそれと引き換えにするように


…必死に守った日々が簡単に、奪われた。




スケジュールの余裕は私から自信を奪って

余計な事を考えさせてばかりいる。



…よっぽど時折一緒に過ごす女の子達の方が

玲於と恋人らしく居られるんだろうな、とか。


誰かを代わりにして、それで満足なら

もうそれでいいじゃん、とか…。



言いようのない不安に一人で泣いてしまう。



いつの間にか薬指の指輪を触る癖が出来た。

自分で自分を励ますしかなかったから。


あの日の玲於を思い出して、必死に耐える。


…笑う玲於、ふざける玲於、

眠る玲於、玲於の横顔、玲於の声、

玲於の背中、玲於の手…


カメラロールと記憶の中を必死で探す。



『…ただ、会いたいよ。気付いて…。』



独り言は、部屋の隅に吸い込まれて


…いくつも、消えた。


.


…この３ヶ月間、私にとって幸いだったのは

通う大学が世間に知られていなかった事。


冬の間は以前のように大学に通った。

評価も良く、予定していた単位も全て取れた。



大学の中に居る時が一番ほっと出来ていた。



"…もう、疲れたなぁ。"



私の心の中、その思いが膨れ上がっていく…


.

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