儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

彼のために 1 ページ21

＿奈々さんの対応は、

的確で迅速だった。

お店の人にも挨拶して、

この事が外部に漏れないよう交渉してくれた。



奈々『…元は私の責任なので。
こちらの事務所には私が報告します。
…ただスキャンダルにしない為にも、
どこかで一部は公開する事になると思います。
カオルさんの方はご自身でお伝えください。
さすがに私も、そこまではやりません！
…悔しいから。』


私に向かってさばさばと告げた。



「…現像したら、全部ちょうだい。」


奈々『…はぁ。あんた、本当にめちゃくちゃ。
それでもあんたが憎めないわ。』



呆れたように笑うと、わたしたちを

それぞれ安全にタクシーに乗せてくれた。




奈々『…カオルさん、玲於が好きですか。』



玲於を乗せたタクシーが先に走り出してから、

奈々さんは窓をノックして私に問いかけた。



私は、さっき告げられなかった答えを伝える。



『…私、玲於じゃなきゃダメなんです。
私が、私より大切にしてる…宝物です。』



奈々『…ふふっ。カオルさん、
あなた、やっぱ玲於には勿体無いなぁ。』



『だから…すみません。まだ離れられません。』


精一杯の気持ちで深く頭を下げた。



奈々『…さっきの二人、素敵でした。
玲於のあんな優しい顔、初めて見ました。
彼の方があなたを離さないんだって、
撮っていて分かりました。それに、私…、
…確かに男として玲於を好きなのに、あの瞬間、
その気持ちよりも所属タレントとしての
彼を守った自分に、驚いています。
…これを機に、自分に折り合いつけます。
私、あなたを嫌いになれなさそうですから。』



穏やかに奈々さんは笑ってくれた。



奈々『…カオルさん、頑張って！』



タクシーが見えなくなるまで

ずっと手を振ってくれるあなたを、


私も絶対嫌いになれません。



.



帰りのタクシーに揺られながら

二つ重なった指輪をなぞった。


重ねても初めから一つだったみたいに見える。



去年から、考えていてくれたのかな…。


ちょっと、自惚れちゃうな…。



すれ違っても、遠く離れても、

いつも強く引き戻してくれるのは玲於。



願わくば、

出来るだけ長く


…私を離さないでいてね。

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