儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

きっかけ 5 ページ15

『…長谷川君、私、
そろそろ失礼するね。』


慎「…えっ？」


『今日お休みした分、明日は朝からなの。』



お手洗いに行くふりをして席を立つと、

当たり前にボディーガードのように

着いてきてくれる長谷川君に、そう告げた。



『そっと帰るから、そのまま楽しんで。』


慎「いや、でも玲於さんに…」


『私からLINEしとくから大丈夫。聞かれたら
帰ったの知らなかったって言えばいいよ。
…今日はありがとう、楽しかった。
またどこかで会えたらよろしくね。』


いやあの、って戸惑う長谷川君には悪いけど

さりげなくサッと部屋を後にした。


受付に預けておいた荷物を取って店も出る。



--明日早いので帰ります。
引き続き楽しんでください。
どうぞごゆっくり。--



デレデレ鼻の下を伸ばしてた玲於が

いつ気付くか分からないけど、

外に出てすぐLINEを入れておいた。



『…多分すぐに伝わっちゃうよね。』


少し考えて、スマホの電源を切って歩く。

そして、さっき指定されたカフェに入った。



カフェのガラス張りの店内からは

通りの様子がよく見える。



…思った通り、

玲於が通りに走り出て来るのが見えた。



『……思いの外、行動が早かったな。
あ、それともLINEに気付いたのかな…。』



玲於がスマホを操作して耳に当てている。


繋がらない事に気付いたのか

どんどんイライラしてるのがよく分かる。




ごめんね。


怒ってる訳じゃないんだよ。

意地悪してる訳でもない。




でも、

…話をしたいと言われてしまった。



だから、私は話さなきゃいけない。

そう思ったんだ。





？『お待たせして、すみません。』



柔らかな声と共に漂う香りに顔を上げる。

玲於が長く愛用している香り…。



私とは、全くタイプの違う人。


砂糖菓子のような甘い見た目なのに、

意思の強そうな瞳。


まだ、玲於を好きなままでいる人。



…今はTHE RAMPAGEのスタッフとなった


玲於の彼女だった、この人が、



"奈々"さん…




『…はじめまして、カオルです。』



眼鏡を一瞬だけ外して、頭を下げた。

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